研究課題
原発からの高レベル放射性廃棄物におけるランタノイド/マイナーアクチノイドの選択的分離は,放射性廃棄物を効率よく安全に処理する上で必須のプロセスである。廃棄物処理の現場では,有機配位子を用いた溶媒抽出法によってその分離が達成されている。しかし,この選択的分離がなぜ達成されているのか,その起源は明らかになっていない。本研究では,ランタノイドやマイナーアクチノイドと有機配位子との間で形成される錯イオンの電子状態や幾何構造について,表面増強赤外分光法により明らかにし,有機配位子が示すイオン選択性の起源について分子科学的に明らかにすることを目的としている。これにより,より高効率,高選択的なランタノイド/マイナーアクチノイド分離に関する科学的指針を提供することが本研究の最終的な目標である。本研究ではこれまでに,溶媒抽出の現場で使用されている2種類の有機配位子のチオール誘導体の合成に成功している。2019年度は,3つめの有機配位子として,溶媒抽出剤の一種であるTPEN(N,N,N′,N′-tetrakis(2-pyridinylmethyl)-1,2-ethanediamine)のチオール誘導体の合成を行った。この配位子を金薄膜上に化学吸着させ,ランタノイドイオンと錯イオンを形成させ,これを表面増強赤外分光によって検出することに成功した。また,上記の研究と平行して,東海村の日本原子力研究開発機構内の放射性管理区域内での表面増強赤外分光の実験を行った。この実験では,広島大学において,ATR用のSiプリズムへの金薄膜の形成と有機配位子の化学吸着を行い,これを東海村に持参して管理区域内にある赤外分光装置にセットし,ランタノイドを含む水溶液を添加して錯イオンを形成させる。この錯イオンの形成を赤外スペクトルにより確認することができた。これにより,今後の放射性マイナーアクチノイドを利用した実験が日本原子力研究開発機構で可能であることを確認した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 10件、 招待講演 3件)
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