研究課題/領域番号 |
16H04099
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
根岸 雄一 東京理科大学, 理学部第一部応用化学科, 教授 (20332182)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 金属クラスター / 高分解能分離 / 高速液体クロマトグラフィー / 合金 / 1原子効果 |
研究実績の概要 |
チオラート保護金クラスターAun(SR)mに新たな機能や物性を付与する方法として、Aun(SR)mに異原子をドープする手法が挙げられる。しかし、この様にして得られる合金クラスターは一般に、ドープ数に分布を持った混合物として調製される。真の意味で異原子のドープ効果を理解するために、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)を駆使し、チオラート保護合金クラスター混合物を異原子ドープ数毎に精密に分離することに取り組んだ。さらに合成法の違いが、クラスター内での異性化反応にどのような影響を与えるのかについても調査を行った。Au25-xAgx(SC4H9)18の混合物を合成し、RP-HPLCにより分析を行った結果、UVクロマトグラム中には複数のピークが観測された。それぞれのフラクションの質量スペクトルを測定した結果、各フラクションには単一の化学組成が含まれていることが確認され、ことからAu25-xAgx(SC4H9)18の混合物をAgのドープ数毎の精密単離に成功したことが明らかになった。各組成のUV-Vis吸収スペクトルから電子構造を評価することで、Ag1原子あたりがどの程度影響を与えるかについて明らかにした。さらに、各組成の抽出イオンクロマトグラムの測定を行うことで、Agドープサイトが異なる位置異性体までをも分離できていることが明らかになった。また、調製法に依存してその位置異性体分布は異なることが明らかになった。さらにトルエン中では、各クラスター間での反応により、Agサイトが変化する異性化反応が進行しており、それは反応直後により異性体分布により進行の仕方が異なることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題研究では、チオラート保護金属クラスターに対する新たな高分解分離法を確立することを目的としている。本年度は、本研究の最終目的の一つである、合金クラスターに対する高分解能分離法の確立に成功した。さらに、こうした方法論の適用範囲についても明らかにした。このことから、現在までの達成度を「当初の計画以上に進行している」と自己評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
Agn(SR)mクラスターは,フォトルミネッセンスの量子収率や導電性が高いことから注目を集めている。また,Pdn(SR)mとPtn(SR)mクラスターについては,高い触媒活性が期待されている。これらのクラスターについては,Aun(SR)mクラスターと比べて,溶液中での安定性が若干低いことが明らかになっている。そこで,クラスターの安定性を高めるため,クラスター表面にて保護分子同士間で強い相互作用を生じる配位子を保護分子に用いる。溶液中にて,これら配位子の存在下,金属イオンを還元剤により還元することでMn(SR)mクラスター(M = Ag,Pd,Pt)を調製する。得られたMn(SR)mクラスター(M = Ag,Pd,Pt)の混合物を高速液体クロマトグラフィーによりサイズ毎に分離する。Aun(SR)mクラスターに対する我々のこれまでの研究より,こうしたタイプの金属クラスターの分離には,逆相カラムの使用が極めて有力な手段であることが明らかになっている。そこで,Mn(SR)mクラスター(M = Ag,Pd,Pt)についても,まずは逆相高速液体クロマトグラフィーを駆使することで,高分解分離に取り組む。また、得られた一連のAun-xMx(SR)mクラスター(M = Ag,Cu)の電子構造を,低温光学吸収分光及びX線吸収微細構造解析により明らかにする。また,幾何構造を,単結晶X線構造解析,粉末X線構造解析,及び広域X線吸収微細構造解析により明らかにする。これらの実験より得られた情報をもとに,Aun-xMx(SR)mクラスター(M = Ag,Cu)における化学組成と,電子・幾何構造の相関を明らかにする。
|