研究課題/領域番号 |
16H04103
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
大村 英樹 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 機能化学研究部門, 主任研究員 (60356665)
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研究分担者 |
鳥塚 健二 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, グループ長 (30357587)
高田 英行 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 電子光技術研究部門, 主任研究員 (50357357)
宮本 良之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 機能材料コンピュテーショナルデザイン研究センター, グループ長 (70500784)
森下 亨 電気通信大学, 量子科学研究センター, 教授 (20313405)
奈良崎 愛子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 機能化学研究部門, 主任研究員 (40357687)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 量子制御 / コヒーレント制御 / レーザーアブレーション / 位相制御レーザーパルス |
研究実績の概要 |
本研究提案の目的は、パルス幅サブ10フェムト秒の光電界の操作された超極短レーザーパルスによって、原子レベルで固体材料を切削・造形する非熱的レーザーカーヴィング技術を開発することである。物質表面での電子の波動関数の染み出しと位相制御レーザーパルスによる光電場との相互作用によって引き起こされるトンネル効果や電界蒸発を巧みに利用することにより物質を切削する技術を開発する。研究期間内での目標は具体的には以下のとおりである。(1) 非熱的レーザーアブレーション観測のための固体表面粒子放出現象計測装置の開発 (2)(ω+2ω)位相制御とサブ10フェムト秒に至る極短パルス化を併用することによって、レーザー固体表面粒子放出現象における急速加熱効果低減の実験的検証と、非熱的レーザーカーヴィングの基本概念を確認、(3)時間依存密度汎関数理論を用いた第一原理電子・格子ダイナミクスのシミュレーションによる非熱的→熱的レーザーアブレーションのクロスオーバーの検証と、トンネルイオン化の解析理論(シーガート漸近理論)による意味づけ。 平成29年度の成果は以下のとおりである。 1.昨年度に整備した、光パルス照射下における平板固体表面からの放出イオンの運動量および放出角度分布の測定を行うことのできる固体表面反応制御用真空チャンバーを用いて、金(Au)平板個体試料について実験を行った。作成した計測装置が設計通りの性能を示していることを確認した。また放出イオンの運動エネルギー分布を熱統計的な理論で解析する手法を整備した。 2.孤立原子・分子について、高強度レーザー場中でのトンネルイオン化及び解離過程についての理論研究を進めた。強レーザー場中の分子ポテンシャル中に例外点と呼ばれる特異な物理状況を見出し、これ利用した解離の制御について新たな知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
(1)昨年度に作成した非熱的レーザーアブレーション観測のための固体表面粒子放出現象計測装置の開発については、設計通りの性能を示していることを確認するとともに解析手法の確立も完了しおおむね順調に進んでいる。 (2)サブ10フェムト秒程度の(ω+2ω)極短パルス発生については、発生器の作製とその動作確認については完了したものの、現有装置の利得狭窄補償したフェムト秒レーザー光源の出力が不安定になる問題が発生しているため、現在の所、(ω+2ω)極短パルス発生には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
1.レーザー光源出力の不安定性の問題を解決して、サブ10フェムト秒程度の(ω+2ω)極短パルス発生を至急行い、非熱的レーザーアブレーション観測のための固体表面粒子放出現象計測装置と組み合わせた実験を開始する。
2.引き続き、固体中のトンネルイオン化の基礎となる孤立原子・分子についての理論研究を進める。特に、イオン化と解離の2つの過程を同時に矛盾なく取り扱うことにより、精密な理論を構築し、実験に有益な情報を提供する。また引き続き時間依存密度汎関数理論を用いた第一原理電子・格子ダイナミクスのシミュレーションによる非熱的→熱的レーザーアブレーションのクロスオーバーの検証を行う。
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