研究実績の概要 |
本研究課題では、複雑な量子状態である強相関電子状態や電子共鳴状態を精密に記述する新しい基礎理論の開発を行い、ナノ・バイオ系、とくに不均一系触媒や光機能分子系の微視的メカニズムを電子状態理論によって解明し、その知見に基づいて、新しいナノ・バイオ系の量子システムの設計・制御することを目的としている。H29年度は、実施計画で挙げた研究課題について下記の研究成果を得た。 (1)合金微粒子の複雑電子状態の理論解析では、銅-金属合金クラスターにおいて、合金の構造と金属のd軌道の占有率に相関があることを理論的に明らかにし、8族・9族の原子(M=Ru, Ph, Os, Ir)ではM原子をコアとするコアシェル構造が安定であり,10族・11族の原子(M=Pd, Ag, Pt, Au)では固溶体構造が安定であることを示した。(2)大規模系強相関理論の開発と応用では、コロイド凝縮相金微粒子におけるヒドロアミノ化反応の反応機構を解明し、アルミナに担持されたAu-Pd合金微粒子によるシリル化反応の理論解析に成功した。(3)大規模系電子共鳴状態の理論開発では、電子共鳴状態理論のアプローチとして、外挿法に基づく安定な結合定数解析接続法の理論開発に成功し、数種類の解析接続の方法についてベンチマーク計算を実施した。また弱い相互作用系の電子共鳴状態について理論解析に成功した。(4)化学反応における極限的圧力効果の研究では、フラーレンとシクロペンタジエンのDiels-Alder反応に独自のPCM XP理論を適用した研究を進展させ、成果発表した。(5)電子移動励起の化学指標の研究では、励起状態プロトン移動反応について、SAC-CI計算を用いてTD-DFT計算の汎関数依存性を評価し、効率的な計算プロトコルを確立した。
|