研究課題
2018年度までの研究から、開殻系ならびに励起状態の安定性向上が課題として浮上したため、2019年度はそれを解決するための分子設計指針の確立を2通りのアプローチによって試みた。1つ目の方法は、熱力学的安定化に基づくものである。π共役系の拡張により、スピンや電荷等を非局在化することで安定性の向上を図った。そのモデルケースとして、これまでに合成した炭素架橋スチリルスチルベン(COPV2)の末端ベンゼン環をナフタレン環としたものを合成した。その際に、ナフタレン環の縮環位置の違いにより、linear、unsymmetrical、bentの3つの異性体が生じた。光照射下での分子の安定性を指標として評価を行ったところ、両末端のナフタレン環の2,3位の辺で縮環した異性体であるlinear体が最も安定性が高く、末端がベンゼン環の従来のCOPV2に比較して光安定性が2倍向上することを見出した。この方法には1つ欠点があり、π拡張によって分子軌道のエネルギー準位が変化してしまい、それに伴い光学的な性質も大幅に変化する点である。これを解決するために、2つ目の方法として速度論的安定化に基づく検討を行った。具体的には、炭素架橋スチルベン(COPV1)およびCOPV2の両末端に、嵩高い立体保護基を導入した誘導体を何種類か合成した。期待通り、従来の無置換体にくらべて吸収・発光波長の顕著な変化は見られなかった。このうち、トリイソプロピルフェニル(Tip)基を導入したCOPV誘導体は光安定性が格段に向上した。分布回帰型(DFB)有機薄膜レーザーデバイスに用いて安定性を評価したところ、立体保護基を有しない従来の誘導体に比べて2桁も寿命が向上することを見出した。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)
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