研究実績の概要 |
フラボノイドは、天然に豊富に存在し、驚くほど多彩な構造を呈する。しかし、その多くは分離不能な近縁化合物の混合物として得られる ため、個々の化学的性質が明らかにされた例は稀である。 本研究は、フラボノイドを基本構造に有する高次構造ポリフェノール類を有機化学的手法で精密に合成し、構造制御された単一組成の物質としての化学的振る舞いを明らかにすることを目的とする。本年度の検討においては、まずこれまでの検討により、見出したフラバンアヌレーション法の効率化を図った。すなわち、本手法に用いる二種のフラバン単量体(2,4-ジオキシおよび2,4-ジチオフラバン誘導体)のより効率的な活性化方法を検討した。その結果、ジチオ体の活性化について、添加剤としてモレキュラージーブス5Aを用いると、反応が劇的に加速されることを見出した。一方、アフゼレキンーエピアフゼレキン複合構造を有する三量体(Selligueain A)の合成においては、最終段階の反応処理方法を工夫した結果、従来法に比べ純度の高い生成物を得ることができるようになった。 これらの検討と並行してイソフラボノイド系天然物ロテノイドの一種であるロテノンならびにデグエリンの合成研究を行った。その結果、フッ化アリールの特異な反応性とジアリールエポキシアルコールの1,2-転位を鍵とした効率合成法を開拓することができた。また、この一連の合成から着想を得た手法を利用して、大環状ポリシクロファンの二量化構造を持つ天然物プシラチン類の系統的な合成経路の開拓にも成功した。今回得られた研究成果は、さらにに複雑なポリフェノール構造を有する類縁体の合成にも応用可能と期待できる。
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