最終年度となる本研究事業においては、引き続き安価な化合物から多様なフラバンモノマーが合成可能な方法論の開拓と、複雑なフラバンオリゴマーの合成と機能探索について、検討を行った。まず、フラバンモノマーの合成においては、容易に入手可能なセリンから調製した光学活性エポキシアミドとフルオロベンゼン誘導体の結合、および分子内法構造族求核置換反応により、基本骨格となるフラバン構造を構築する手法を確立した。これにより様々な置換様式を有するフラバンモノマーが、アミノ酸を原料として容易に合成できるようになった。一方、オリゴマーの合成については糖鎖合成において利用されるオルトゴナル活性化法と、独自に見出したアヌレーション法を組み合せて用い、累積二重連結構造を有するフラバンオリゴマーであるエスクリタンニンCおよびカテキン-エピカテキン四量体の初の全合成に成功した。この方法の鍵は、活性化基としてジオキシ基を有するフラバン単位とジチオ基を有するフラバン単位を交互に活性化し、他方と結合させることにより効率的に二重連結構造を構築できる点にある。なお、この一連の検討の途上、反応(アヌレーション)の位置選択性について興味深い知見が得られた。すなわち、ジチオ基を有するフラバン単位をソフトなルイス酸を用いて活性化すると、通常とは異なる位置での結合が可能となることを見出した。 この手法を応用して様々な類縁化合物を合成し各種の生理活性評価を行った結果、幾つかの興味深い結果が得られた。例えば、三量体構造を持つオリゴマー(セリゲアインA)が有する甘味について、ヒト甘味受容体と共役するGタンパク質を安定発現させた培養細胞を用いた細胞評価系にて活性を評価したところ、低濃度で顕著な細胞応答が観測された。
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