研究課題/領域番号 |
16H04110
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
時任 宣博 京都大学, 化学研究所, 教授 (90197864)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 有機元素化学 / 高周期14族元素 / 芳香族化合物 / フェニルアニオン |
研究実績の概要 |
本研究では、フェニルアニオンの高周期14族元素類縁体を、新規π共役化合物創出に繋がるビルディングブロックと捉え、その合成手法の確立とその基本的性質の解明を目指している。これらの化合物は、かさ高い置換基を持たなくとも電子反発により自己多量化を防ぐことが期待され、また炭素類縁体とは異なる反応性を示すと考えている。平成28年度は、これまでに合成・単離に成功しているゲルマニウム類縁体に加え、スズ類縁体の合成・単離に成功し、その構造・性質を明らかにした。スズ類縁体では、ゲルマニウム類縁体に比して、その中心元素の二価化学種としての性質がより強く発現していることが示唆された。また対カチオンがゲルマベンゼニル環に与える影響を系統的に解明するため、カリウム体に加え、リチウムおよびナトリウム体の合成を検討し、各種金属試薬を反応させることで、対応するアニオン体を合成することに成功した。その結果、アルカリ金属の原子半径の差により、それぞれの構造に差が生じていることが判り、結晶性や安定性に違いが発現することが明らかとなった。また、それらの配位子としての機能に着目し、初めての金属置換の含高周期14族元素芳香族化合物とみなせる錯体を合成・単離することに成功した。これらの錯体は、これまでに例のない特殊な配位形式を有する化合物であり、フェニルアニオンの高周期14族元素類縁体が配位子として特異な性質を有していることを示した重要な結果であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた、含高周期14族元素フェニルアニオン類のかさ高い置換基を用いない新規合成手法の開発は難航しているものの、従来の手法に則ったスズ類縁体の合成・単離を達成し、置換元素の違いによる性質の変化を明確に検証することができた。またそれらの反応性を検証する過程で、遷移金属錯体配位子として特異な配位形式を示すことが明らかとなり、その応用面における可能性を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き含高周期14族元素フェニルアニオンの新規合成法の開拓を行う。これまではフェニルアニオン類縁体をその主たる標的化合物としていたが、縮合多環式芳香族化合物も視野に入れ、検討を推し進める。またケイ素類縁体の合成にも着手し、高周期14族元素への置換効果を系統的に明らかにする。
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