多環芳香族炭化水素(PAH)の骨格内に5員環を含む化合物はCP-PAHとよばれ,高い電子受容性やユニークな反応性などが知られている。本研究では,フラーレンの部分構造であるピラシレンを鍵骨格に用いて,チオフェン環を含むπ拡張型ピラシレンの簡便な合成ルートを示し,得られた分子の電子構造に高い反芳香族性が寄与していること,また,これにより高い電子受容性と狭いHOMO-LUMOギャップをもつことを明らかにした。さらに,未だその反応機構に議論が続いている酸化的C-Hカップリング(Scholl)反応に関して,これまでに提唱されていないジカチオン中間体を経由する新しい反応機構を提唱した。
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