研究課題
縮合多環構造を持つ安定有機中性ラジカルであるトリオキソトリアンギュレン(TOT)を基盤として、A)TOT骨格内部に硫黄原子を組み込んだ類縁体、B)TOT骨格を連結した巨大π電子系有機中性ラジカル、C)TOTを担持した一次元ポリマーの3つの物質開拓指針に基づいた分子設計・合成を行った。また、合成した各分子について酸化還元特性や電子スピン構造を解明し、有機二次電池の正極活物質など、電子材料としての機能を調査した。課題A:硫黄原子を導入した新規縮合多環型中性ラジカル分子について、骨格周辺に様々な置換基を持つ誘導体の中性ラジカル種の合成に成功した。ESR測定から電子スピンが硫黄原子上にも大きく分布していることが明らかになった。溶液での電子スペクトルからは、分子間相互作用によりπ型ダイマーを 形成し、近赤外光吸収を示すことがわかった。課題B:巨大π電子系有機中性ラジカルについて、TOT骨格の酸素原子をπ電子系骨格に置き換えた誘導体を合成ターゲットとして種々のルートを探索したが、その合成が困難であった。そこで合成ターゲットを変更し、TOTを連結させてπ共役系を拡張した新規誘導体の設計・合成を行った。ベンゼン環を介して3つのTOTが連結したオリゴマーやTOTを直接連結させた2~4量体の合成に成功した。これらはアニオン塩および中性ラジカルの状態で安定であり、アルキル基の導入により可溶化が可能だった。課題C:TOT骨格にクロスカップリング反応を用いることで重合部位を導入してモノマーを合成し、さらにそれをラジカル重合させることで、ポリスチレン鎖およびポリエチレングリコール鎖にTOTを結 合させた誘導体に導いた。この分子について電気化学測定を行い、その酸化還元特性に関する基礎的な知見を得た。また、オリゴマー中のTOT骨格を中性ラジカルに変換する反応検討も行い、安定な固体として目的物を得た。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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