原子数明確なクラスターの化学的な自在合成を達成するための前駆体として、オクタンチオールを配位子とした白金多核錯体の合成を行なった。分取HPLC (SECカラム)を用いて精製を行うことで、核数5から13までの環状白金チオラート錯体を単離することに初めて成功した(6核と8核については他の配位子で実績が既にある)。得られた多核錯体はすべてMALDI-TOF-MS、NMR、元素分析測定により完全に単一分子量、単一組成であることが確かめられた。 蛍光測定では核数ごとに異なる発光特性が得られており、低温では長寿命の燐光も観測された。電気化学測定を用いた酸化還元電位では偶奇性も観測されており、環状π共役分子としてのユニークな特性も発現していることが明らかとなった。 上記を早期に達成することができたので、引き続きクラスターへの変換についても着手を開始した。担体としてKetjenblack (カーボン) を用い、各核数のチオラート錯体を一定の担持濃度で担持し、電子顕微鏡(STEM)によって分散状態を確認した。結果、担持は比較的均であることが確かめられ、表面密度はチオラート白金成分のカーボンに対する質量%でコントロールでき、0.4wt%から1.8wt%までは均一性を保つことが判明した。担持密度が非常に高い場合は凝集により、得られるクラスターの核数は所望のものから変化してしまうことが予想されるが、密度を低下させることによってこの凝集を抑制することができると考えられる。今後、この制御を行なっていく予定である。
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