研究実績の概要 |
H28年度に確立した白金チオラート多核錯体の合成と、各核数の錯体の単離精製法を基盤として、5核から12核のクラスター合成に取り組んだ。白金多核錯体を還元し、金属白金に変換は、水素気流下の加熱(250℃)で完全に還元されることをXPSやXRDにより確認した。各種還元法を検討した結果、この水素還元法が最も温和に、リーチング無しに所望のクラスターを与えることを確かめた。カーボンブラック(Ketjenblack)に担持した8核白金多核錯体を同条件にて還元したサンプルを作製し、球面収差補正されたHAADF-STEMにて原子分解能でクラスターの観察を実施したところ、所望の核数でクラスターが精密合成されるか否かは担持濃度に強く依存することが判明した。具体的には0.4wt%Ptの担持濃度では核数が規定できるのに対し、1.8wt%Ptではクラスター同士の凝集が起こってしまい、粒径の大きなナノ粒子が生成することがわかった。加熱中における担体上のクラスターの移動が原因であると考えられる。同条件は他の核数のクラスター合成にも適用することが可能であり、Pt5からPt12それぞれの担持クラスター精密合成に初めて成功した。ただし、Pt5とPt6についてはクラスターの移動度、あるいは同じwt%であっても表面の粒子密度が増えることなどから凝集が相対的に起こりやすく、0.2wt%まで担持量を下げることが必要であった。 合金化にむけては6核の環状チオラート多核錯体と種々の金属イオンとの相互作用を予備的に調査している。結果、Cu, Ag, Auのイオンがチオラートの環状構造の中心部に内包されることを確認した。H30年度は本複合体の形成をより詳細に調査するとともに、1原子ドープ合金クラスターの精密合成に向けた検討を行う予定である。
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