研究課題/領域番号 |
16H04116
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大木 靖弘 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (10324394)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ニトロゲナーゼ / クラスター / 金属 / 硫黄 / 酵素モデル |
研究実績の概要 |
(a) 本研究で主に用いる反応前駆体である三核錯体(C5Me5)3Mo3S4の大量合成法を開発した。既法の反応ではNa/Hgが用いられていたが、当該反応はスケールアップすると反応物とNa/Hgの接触効率低下を招くことから、少量の合成反応でしか成立しないことが判明した。そこで別途合成するため、まずカチオン性三核錯体[(C5Me5)3Mo3S4]+を大量かつ簡便に合成する反応・精製条件を確立した。さらにカチオン性三核錯体をKC8で一電子還元する反応から、十分な純度の(C5Me5)3Mo3S4が再現性よく大量に合成できることを確認した。大量合成に成功した(C5Me5)3Mo3S4を前駆体として用い、第四の遷移金属原子を取り込ませることで、キュバン型金属-硫黄クラスターが得られることも見出している。 (b) 本研究開始前より合成していた、ニトロゲナーゼ活性中心FeMo-cofactorのモデルとなるMo/Fe/Sクラスター[(C5Me5)MoFe5S9(SH)]3-を反応前駆体として、ニトロゲナーゼ関連基質の触媒的な還元反応を検討した。その結果、タンパクの存在しない条件下で、プロトン源として[Et3NH][BF4]、還元剤としてSmI2を用いることで、[CN]-やCOの還元反応が触媒的に進行し、炭化水素を与えることが分かった。特に興味深いのは、C-C結合形成を伴ってC2~C5までの炭化水素が~40%の選択性で生成したことと、モデルクラスターの触媒回転数がタンパクより抽出したFeMo-cofactorを用いる反応の約1/3に達したことであり、両者に共通する構造的な特徴が本反応を進行させる上で重要なことが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定通りに(C5Me5)3Mo3S4を大量合成し、種々のキュバン型金属-硫黄クラスターを合成する基盤を確立した。また、従来研究で合成していたFeMo-cofactorモデルを用いるC1基質還元反応が触媒的に進行することを見出し、学術論文としてまとめた。以上から、研究の進展は順調と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で合成する化合物群はほぼ全て新規化合物であり、かつ常磁性でNMRによる同定が困難なことから、当初計画よりも分光測定データを充実させる方向へ労力を傾ける。また、酵素との関連性や合成難易度とのバランスを見極めつつ、Ti, Mo, Feを第四の金属原子として(C5Me5)3Mo3S4に取り込ませる反応を優先的に検討する。
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