研究課題/領域番号 |
16H04117
|
研究機関 | 名古屋工業大学 |
研究代表者 |
増田 秀樹 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50209441)
|
研究分担者 |
猪股 智彦 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (40397493)
小澤 智宏 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70270999)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 窒素活性化 / 酸素活性化 / 炭酸ガス活性化 / イオン液体 / イオン液体修飾電極 / 電気化学的還元 |
研究実績の概要 |
窒素、酸素、炭酸ガス活性化を低環境負荷下で遂行するための触媒システムの開発を行っている。窒素については、これまで知られていなかった、酸化による窒素の活性化を世界で初めて達成した。これまで窒素の活性化は窒素を金属イオンに配位させ、非常に強力な還元剤を用いて6電子還元して窒素を切断しアンモニアへと変換するのがこれまでの常套手段であったが、今回我々は、安定なモリブデン(I)-窒素錯体を合成し、これをマイルドな一電子酸化触媒を用いて窒素ー窒素三重結合を切ることに成功した。これを結晶学的、分光学的に確認し、DFT理論計算を用いてそのメカニズムを解明した。また、炭酸ガスの活性化についても、ゼロ価、一価、二価の銅電極を用い、炭酸ガスを電気化学的に還元したところ、ゼロ価の銅上にOH基が存在すると、高効率でエチレンやメタンへの変換されることに成功した。本研究では、そのメカニズムを表面増強赤外吸収スペクトル法を用いて追跡し、その反応機構についてはDFT理論計算を用いて行った。酸素の活性化についても、メタンモノオキシゲナーゼに見られる異種原子価二核銅錯体のモデル錯体を合成し、異種原子価銅錯体を選択的に合成し、それらのキャラクタリゼーションを行い、またその反応性を分光学的、電気化学的に検討追跡したところ、異種原子価の銅の環境に応じて反応性が異なることが分かった。これらの成果は現在、アメリカ化学会およびドイツ化学会のジャーナルに投稿中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
窒素の活性化において、これまでは強力な還元剤を用いて行っていたが、マイルドな酸化剤でも窒素の三重結合が切断されることを初めて見出した。また、炭酸ガスの電気化学的還元においても、表面増強赤外吸収スペクトルを用いて銅(0)にOH基の存在でエチレンやメタンの生成にまで進むことを初めて見出している。これは当初の想定を遥かに越える成果と考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
窒素の活性化については、現在酸化によって窒素の三重結合が切断されることを見出したが、触媒的にアンモニアにまで変換されるまでには到っていない。今後はこれを触媒的に廻すシステムの構築に持って行きたい。また、炭酸ガスの有機化合物への変換に成功しているが、これをさらに高収率で得られるシステムへと展開する必要がある。さらに、酸素の活性化についても、メタンモノオキシゲナーゼのモデル錯体まではできたものの、まだメタンの水酸化には到っていない。今後はこれをメタンの水酸化へと持って行きたい。
|