研究実績の概要 |
ゼオライトサブナノ空間内にイオン交換された金属イオンや担持された金属種には,通常の金属イオンや金属のそれらとは全く異なる,新奇な電子状態が創出される.実際,ゼオライト中ではCu(I)イオンが安定化され,それは室温でN2やH2,更にXeとでさえ強い結合を形成することを見いだし,報告してきた.これらの現象には,ゼオライト骨格中に存在するAlの相互配置やゼオライト空間を構成する細孔の曲率が重要な因子となっていることも提案し,ゼオライト細孔の特性を利用することによって,新奇な磁気特性(超常磁性)を示す数オングストロームサイズのNi微粒子の調製や特異な電子状態であるNi(I)種の創製を行った.また,このNi(I)がCOの室温付近でのCO2への酸化反応の活性点として機能することも見出した.さらに,10族元素であるNi付近の元素である12族元素のZn, Cdや9族元素のCoについても研究を展開した.そして,原子状Zn(0)種の形成やその種を経由したZn(I)イオンの創出および二量体Cd(I)イオンの形成に成功した.まず,Zn(I)の酸素による活性化過程をへて,Zn-oxyl種が形成されることを見いだし,その種を利用した室温でのメタンの活性化に成功した.また,Cd(I)二量体種とN2Oの反応を経て,Cd(II)-O-Cd(II)が形成され,その種を活性点として,室温でのCOの酸化にも成功した.さらに,Co(II)イオンを含むゼオライト系を特異反応場として利用することによって,酸素の活性化をめざして,Co(II)の新奇な電子状態の創出の研究も行い,Co(II)を経由した酸素との興味深い反応も見いだした.これらの成果は,ゼオライトサブナノ空間を利用した,交換イオンへの新奇な電子状態の創出であり,本研究で提案したアイデアは,今後の新たな無機化学研究分野の開拓にも貢献できるものと期待している.
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