研究課題/領域番号 |
16H04119
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久枝 良雄 九州大学, 工学研究院, 教授 (70150498)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ポルフィセン / ビタミンB12誘導体 / 脱ハロゲン化反応 / トリフルオロメチル化反応 / 酸化チタン / 電解反応 / コバルト錯体 / 触媒反応 |
研究実績の概要 |
今後の科学技術に期待されるのは環境との調和である。生体系の機能発現を範とし、それに工学的な発想を加味して生体系の機能を凌駕する技術を目指すバイオインスパイアード材料の開発が注目されている。生体系においてヘム、クロロフィル、ビタミンB12などの環状テトラピロール系金属錯体は生命の色素と言われ、極めて重要で多彩な機能を発現している。これらを含む金属酵素は、高活性・高選択的であるが、構造安定性に欠け応用範囲が狭いなどの欠点も多い。そこで本研究では、単なる酵素機能のシミュレーションに留まらず、光増感剤と生体関連金属錯体の組み合わせにより革新的機能材料を開発し、生物無機化学の新領域を開拓する。特に環境に優しい精密有機合成触媒、水素発生触媒、および環境汚染物質の分解・有用物質への変換に焦点を当てる。 本年度は、ビタミンB12誘導体と酸化チタンの組合せに焦点を当てた。二酸化チタン(TiO2)に光照射した際に生じる励起電子を還元剤として利用し、B12誘導体をCo(I)種に還元できる。この反応を利用して、以下の触媒反応を開発した。(1)環境汚染物質である有機ハロゲン化物の脱ハロゲン化反応(2)酸素存在下で反応を行う事により、トリハロメチル基からエステルおよびアミドへの変換 また、電気化学的手法により、ビタミンB12誘導体をメディエーターとしたトリフルオロメチル化反応を開発した。 更に、ポルフィリンの異性体であるポルフィセンの簡便合成法を見出した。今後、そのコバルト錯体の酸化還元挙動と反応性について検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、生体関連金属錯体と半導体・無機物質、高分子、光増感剤との組み合わせにより、新規高活性バイオインスパイアード触媒を創製し、その構造と反応特性を明らかにする。初年度はビタミンB12誘導体の機能開発に精力を注いだ。2年目からはポルフィリン異性体であるポルフィセン錯体の新機能の開拓を進展させる。今年度は、ビタミンB12-可視光駆動型酸化チタン共有結合系を構築し、光により活性化するバイオインスパイアード触媒を創製した。脱ハロゲン化反応や酸素存在下でのトリハロメチル基からエステルおよびアミドへの変換など、酵素系では不可能な反応の開拓に成功した。また、環境に優しいトリフルオロメチル化反応の開発に成功した。更に、次年度に向けて、ポルフィリンの異性体であるポルフィセンの簡便合成にも成功しており、そのコバルト錯体の触媒反応への展開が期待出来る。 以上のように、研究は極めて順調に進行しており、次年度以降に大きな発展か期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、ビタミンB12系触媒反応としては、パーフルオロアルキル化反応やヘック反応など、多才な反応系に展開したい。光増感剤との組合せ、および電気化学的手法による活性化の両手法を用いて、多様な触媒系を確立する。酵素系では出来ない種々の反応を開拓する。 また、ポルフィリン異性体であるポルフィセンの化学を進展させたい。初年度にポルフィセンの簡便合成を見出したので、コバルト錯体の触媒反応へと展開する。ポルフィリン錯体とは酸化還元挙動が大きく異なる。ポルフィセン配位子はLUMOが安定化しており配位子還元が起こりやすい。そこで配位子が酸化還元に関与するノンイノセント型反応の開拓を行う。
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