研究課題/領域番号 |
16H04124
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
人見 穣 同志社大学, 理工学部, 教授 (20335186)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 過酸化水素 / 鉄錯体 / ユーロピウム / 細胞 / 置換基効果 / 蛍光 / 発光 / ペルオキシダーゼ |
研究実績の概要 |
水中で過酸化水素と反応し外部基質を酸化分解するペルオキシダーゼ活性を示す単核鉄錯体に赤色蛍光分子レゾルフィンを連結したMBFhC3は高速かつ高感度な過酸化水素蛍光プローブとなるが、放出される赤色蛍光団であるレゾルフィンの放出効率が低いという問題点があった。我々は、レゾルフィンと単核鉄錯体を連結しているアルキル鎖長がレゾルフィンの放出効率に影響を与えると考え、すでに合成しているプロピレンリンカーを有するMBFhC3に加え、エチレンリンカーを有するMBFhC2、および、ブチレンリンカーを有するMBFhC4の合成を目指した。MBFhC3の合成において確立していた合成ルートでは、福山法によって第2級アミンを合成していたが、収率が低い問題点があった。そのため、種々の合成法を検討し、ワンポットでアジド基の還元とイミンの生成と還元する新たな合成ルートを確立した。得られた一連の金属錯体型過酸化水素蛍光プローブMBFhと過酸化水素との反応を蛍光強度の増加を利用し、過酸化水素を基準としたレゾルフィン生成の効率を求めた結果、エチレンリンカーを有するMBFhC2が既存のMBFhC3に比べて高効率にレゾルフィンを放出することを見いだした。また、MBFhC2を用いてHeLa細胞内の過酸化水素をイメージング可能であることを見いだした。また、MBFhの鉄錯体部位の配位子にニトロ基、メトキシ基を導入し、ペルオキシダーゼ活性を評価した結果、ニトロ基を導入した錯体において酸化効率が向上することを見出した。また、過酸化水素と可逆的に結合し可逆的に発光強度を変化させるユーロピウム錯体についても研究を進めた。従来使用されているユーロピウムーテトラサイクリン錯体の励起波長は紫外領域であり細胞毒性が懸念される。そのため、可視光励起が可能なユーロピウム錯体の合成を行い、過酸化水素との反応について検討を加えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
蛍光プローブの感度向上について大きな進展があった。また、可視光励起可能なユーロピウムの合成にも成功した。
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今後の研究の推進方策 |
高感度の過酸化水素蛍光プローブを用いた研究を進めるとともに、蛍光団の構造に改良を加え、細胞内の拡散、膜透過を抑制する計画である。また、可視光励起可能なユーロピウムを用いた可逆的な過酸化水素発光検出にも挑戦する。
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