研究課題/領域番号 |
16H04129
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
金原 数 東京工業大学, 生命理工学院, 教授 (30282578)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 両親媒性分子 / イオンチャネル / ポリエチレングリコール / マルチブロック構造 |
研究実績の概要 |
本研究で目的とする多回膜貫通タンパク質を模倣した両親媒性マルチブロック分子構築において,親水部として利用するオリゴエチレングリコールを簡便に合成する手法について検討を行った。その結果,精製プロセスにおいて,クロマトグラフィーによる精製を一切使用せず,大スケールで目的とする単分散オリゴエチレングリコールを得る手法の開拓に成功した。実際,この手法により,オリゴエチレングリコール8量体,12量体,16量体を,短時間で数十グラムというスケールで得ることができた。これをもとに以下に示す両親媒性マルチブロック分子の構築を検討した。 (1)多回膜貫通タンパク質を模倣した直鎖状両親媒性マルチブロック骨格の構築 外部刺激応答性を有する両親媒性マルチブロック骨格疎水部として,オルト位に置換基を有するビピリジル部位,親水部としてオリゴエチレングリコールを有する直鎖状両親媒性マルチブロック骨格の構築を試みた。その結果,疎水部の繰り返し単位数が1および3の分子を得ることに成功した。さらに,副生成物として,疎水部に複数のビピリジル部位が導入された分子の合成にも成功した。これらを用いることで,刺激応答性に対する疎水部繰り返し数および分子長の影響について評価が可能になると期待される。 (2)熱応答性を示す環状分子骨格の構築 熱応答性を示す分子の構築を目的として,両親媒性マルチブロック構造を環状化した分子の合成を検討した。その結果,疎水部としてトラン骨格,親水部としてオリゴエチレングリコールを有する分子の合成に成功した。さらに,疎水部の構造を変化させた誘導体の合成にも成功した。これらにより,分子構造と熱応答性の相関について評価が可能になると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の遂行において,目的物質の合成ルートの確立は最も重要なプロセスである。対象物質が,水と有機溶媒の両方に親和性をもつ両親媒性分子であること,さらに分子量が比較的大きく,通常の小分子化合物とは異なる振る舞いをすることが予想される中~高分子化合物であること,この二つの要因が目的物質の合成や取り扱いを困難にすることが予想された。このような背景のもと,親水部の最も重要な骨格である単分散オリゴエチレングリコールの大量合成法の確立に成功したことは,目的分子の合成ルート確立に向けた大きな進歩と言える。これにより,様々な分子設計が可能となった。さらに,実際に目的物質の基本骨格である直鎖状ならびに環状の両親媒性マルチブロック分子の構築にも成功している。当初想定された合成上の問題がほぼ解決されたと見なされることから,研究計画はおおむね順調に進展しているとの判断に至った。
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今後の研究の推進方策 |
基本的な物質合成ルートについては目途をつけることができたため,今後は刺激応答性について検討する計画である。具体的には、以下について検討する。 (1)光応答性の付与 (2)リガンド応答性イオンチャネルの高機能化 (3)熱応答性分子の構築 (4)膜貫通回数の最適化
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