研究課題/領域番号 |
16H04130
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
生越 友樹 金沢大学, 物質化学系, 教授 (00447682)
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研究分担者 |
山岸 忠明 金沢大学, 物質化学系, 教授 (90220251)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ピラーアレーン / 結晶 / 分離剤 / アルカン / 二置換ベンゼン |
研究実績の概要 |
石油は、幅広い分子量分布を有する炭化水素の混合物である。この混合物を精製して得られる炭化水素は、高分子合成や、電力・エネルギー産業などへ幅広く用いられている。しかし炭化水素はC-CまたはC-H結合のみからなり、強い相互作用を形成可能な極性官能基を有していない。これより、炭化水素の濃縮・分離は、非常に困難であり、現状は蒸留精製が用いられており、非常に大きなエネルギーを必要とする。研究代表者は最近、5員環のピラー[5]アレーンの空孔を空にした固体ピラー[5]アレーン結晶を、炭化水素溶液に浸漬させると100%の効率で直鎖炭化水素を強く取り込むことを見出した。そこで本研究では、ピラー[n]アレーン結晶の破格の炭化水素認識特性に基づく分離剤への展開を検討した。その結果、5員環のピラー[5]アレーンは、直鎖状炭化水素のみを選択的に取り込むのに対し、6員環のピラー[6]アレーンは、分岐炭化水素のみを選択的に取り込むことが明らかとなった。そこで、直鎖と分岐が混合したオクタン・イソオクタン混合物に、ピラー[5]アレーンまたは、ピラー[6]アレーン結晶を蒸気に曝した。その結果、混合物から、ピラー[5]アレーン結晶は直鎖のオクタン、ピラー[6]アレーンは分岐のイソオクタンを選択的に吸着することが分かった。ガソリンなどに用いられるイソオクタンとオクタンを分離することはこれまでに困難であり、非常に有用であるといえる。また、m-, p-ジビニルベンゼンの分離能力を評価したところ、ピラー[6]アレーン結晶を用いるとパラ体のみを選択的に吸着することが分かった。さらに興味深いことに、ジビニルベンゼンを吸着すると、目視で青色発光を示すことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1)分離が困難であったオクタン・イソオクタン混合物や、m-、p-ジビニルベンゼン混合物を選択的に分離できることが分かった。 2)さらに当初は予期しなかったことであるが、ジビニルベンゼンを吸着すると、目視で青色発光を示すことが分かった。
これより本研究課題は当初の計画以上に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
ジビニルベンゼンを吸着すると、目視で青色発光を示すメカニズムを解明する。またピラー[5]アレーン、ピラー[6]アレーン結晶をカラムに充填し、分離能力を評価し、分子設計へとフィードバックする。このフィードバックプロセスにより、高性能なピラー[5]アレーン、ピラー[6]アレーン結晶カラムシステムを構築する。
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