研究課題/領域番号 |
16H04132
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
持田 智行 神戸大学, 理学研究科, 教授 (30280580)
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研究分担者 |
桑原 大介 電気通信大学, 研究設備センター, 准教授 (50270468)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 金属錯体 / イオン液体 |
研究実績の概要 |
本課題は、金属錯体をカチオンとするイオン液体および関連物質の物質開発と機能開拓を目的とする。これらは金属錯体とイオン液体の特性を併せ持つ多機能物質である。 今年度は第一に、サーモクロミックイオン液体の開発を目的として、ロジウムイソシアニド錯体をカチオンとするイオン液体を合成した。その結果、この液体はロジウム間結合の生成に基づくサーモクロミズムを示し、高温で橙色、低温で青紫色を呈することがわかった。また低温でオリゴマー化に基づく蛍光を示した。さらに、この液体は化学反応性を有し、ヨウ化メチル蒸気に触れると酸化的付加を起こし、ヨウ素との反応によって多核錯体を形成した。このように、サーモクロミズム、ベイポクロミズム、蛍光性、化学反応性を備えた優れた多機能液体が実現した。 第二に、ハーフサンドイッチ型錯体の二量化平衡に基づくサーモクロミックイオン液体を開発した。これらは置換基に応じた色調変化を示す常磁性液体であり、温度低下による二量化に伴う磁化率の減少が認められた。 第三に、サンドイッチ型ルテニウム錯体系イオン液体の分子運動性に関する検討を行なった。NMR分光の手法を用いて、カチオン・アニオン間距離および置換基の運動状態を明らかにした。液体の粘度は、主にカチオンの運動性と相関していることが示された。 第四に、イオン液体とイオン結晶の中間相であるイオン性プラスチック相の発現と機能開拓を目的として、一連のフェロセン系の塩を系統的に合成した。これらの相挙動を検討することにより、分子体積・形状とプラスチック相への相転移温度の間の相関を見出した。さらに、プラスチック相発現に有利なアニオンを見出した。このほか、関連するフェロセン系物質の構造、熱物性、および原子価状態に関する検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究において、有機金属を用いた特徴あるイオン液体が実現した。本系は光物性や反応性などを備えた優れた多機能液体であり、機能性液体の概念を大きく拡張するものである。さらに、物性上の展開が期待される柔粘性イオン結晶の設計指針を得ることができた。これらは、金属錯体系イオン液体の今後の展開につながる成果である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた結果を基盤として、より広範な化学反応性・光応答性を有する金属錯体をカチオンとするイオン液体を開発し、その機能性評価を行う。あわせて、柔粘性イオン結晶について、相変化に伴う物性制御の可能性を探索する。
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