研究課題/領域番号 |
16H04136
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
手木 芳男 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (00180068)
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研究分担者 |
仕幸 英治 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90377440)
吉野 治一 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 准教授 (60295681)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | πラジカル / 励起状態ダイナミクス / 分子スピントロニクス / 光電流 / 有機電荷移動錯体 / 磁場効果 |
研究実績の概要 |
交付申請書に従って、以下の3つの課題に取り組んだ。 [課題(1)] 高い光耐久性と機能性を有する拡張π骨格安定ラジカルの設計・合成・基礎物性解明 : 昨年度までに、ペンタセン-ビラジカル系への拡張に成功し、その基礎物性を明らかにした。本年度はこの系の励起状態ダイナミクスを明らかにする目的で超高速過渡吸収測定を行った。ラジカルを2個つけた事による更なる光耐久性の向上はスピン交換による増強系間交差でよく説明できた。また、ペンタセン-ビラジカル系を用いたデバイスを作成し電界効果トランジスタ(FET)性能を評価したところ、小さいながらもFET性能が観測できた。平面性を向上させた分子骨格を有するペンタセン-ラジカル系を合成し、その光耐久性を調べた所、これまでのものを遥かに凌駕する著しい光耐久性が実現できた。 [課題(2)] 導電性を高めた有機ラジカル材料を用いた(光)伝導、スピン整列等の固体物性解明 : 有機πラジカル材料として上記のペンタセン-ビラジカル系を櫛型電極にコートした素子を作成して導電性を調べたところ、比較的大きな光伝導が観測された。また、昨年度に引き続き、本年度もラジカルを付加していないピレン系の電荷移動錯体を用いた薄膜形成条件の検討と光伝導の測定を実施した。新たに、電気的検出ESR測定も行い、この系のキャリアダイナミクスの詳細が解明できた。 [課題(3)] πラジカルを用いた分子デバイスの作成とスピン流等の解明とその制御: 昨年度に引き続きラジカル部位を有しないピレン系のCT錯体系を用いて実証デバイスを作成し、光電流の磁場効果とその量子力学的シミュレーションによる解析に成功した。また、πラジカルを用いた分子デバイスの作成とスピン流等の解明を目的として、[課題1」で高い光耐久性が実証できたペンタセン―ビラジカル系での蒸着条件等を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に高い光耐久性を示すペンタセン-ビラジカル系の合成とその基礎物性を明らかにし、本年度は、超高速過渡吸収測定により励起状態ダイナミクスを明らにかし、ラジカルを2個つけた事による更なる光耐久性の向上はスピン交換による増強系間交差でよく説明できることが解明された。また、小さいながらも光電流と電界効果トランジスタ性能を観測できた。また、平面性を向上させた分子骨格を有するペンタセン-ラジカル系を合成し、その光耐久性を調べた所、可視光存在下でも安定なペンタセン系の代表として市販されているTIPS-ペンタセンを遥かに凌駕する著しい光耐久性が実現でき、本研究の課題(1)の目標は予想以上に十分に達成された。課題(2)についても順調に進行している。課題(3)は少し遅れ気味であるが、全体としては、おおむね良好な結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
申請計画に沿って研究はおおむね順調に進行しており、現在の所、特に大きな問題は発生していない。課題(1)の「高い光耐久性と機能性を有する拡張π骨格安定ラジカルの設計・合成・基礎物性解明」では予想以上の成果が得られており、今後の振興方策としては、重点を以下の2課題に移して研究を進める。 [課題(2)] 導電性を高めた有機ラジカル材料を用いた(光)伝導、スピン整列等の固体物性解明 [課題(3)] πラジカルを用いた分子デバイスの作成とスピン流等の解明とその制御
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