研究課題/領域番号 |
16H04137
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
椎木 弘 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70335769)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 分子インプリンティング / 温度感応性ポリマー / 形状記憶 / 光散乱 / 光アンテナ / 単一細胞 / 腸管出血性大腸菌 / 暗視野顕微鏡 |
研究実績の概要 |
金ナノ粒子集合体をポリマーでカプセル化したハイブリッド表面へのO157抗原鋳型形成に成功した。温度感応性ポリマーを用いることで温度制御によるテンプレート(O157抗原)の吐き出しが可能になった。このハイブリッドは自発的に大腸菌O157に結合し,暗視野下での観察において金ナノ粒子集合体の光学特性に基づいた強い散乱光を生じ,明瞭な光スポットとして観察された。異なる大腸菌(O26,O-rough)を用いて同様の実験を行ったところ,ハイブリッドの光学特性に基づく光散乱は観察されなかった。大腸菌O157表面に結合した複数のハイブリッドは細胞の光散乱強度を高めることが明らかになり,30倍以上の選択性を示した。ハイブリッドの分子認識能の温度依存性について評価した。313Kでは大腸菌はぼんやりとしたロッド状の光スポットとして観察されたのに対し,298Kでは大腸菌は明瞭な光スポットとして観察された。これは,鋳型が温度感応性ポリマーをマトリクスとして形成されているためであり,298Kではハイブリッド表面の鋳型と大腸菌表面のO157抗原が特異結合する。313Kではポリマーの相転移により鋳型が消失し,大腸菌との結合が解消される。このようにして,温度変化により鋳型金ナノ粒子の結合性の制御が可能となった。そこで,温度変化を繰り返して再度実験を行ったところ,298Kでの光散乱強度に変化は見られなかった。この繰り返しの後であっても,鋳型金ナノ粒子は特異結合性を示した。このことは,相転移を経ても298Kではポリマー中に鋳型が高精度に再構築されることを意味している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画通り,分子鋳型をもつハイブリッドの形成が達成された。このハイブリッドを用いることで,自発的かつ特異的に大腸菌O157を標識することが可能になった。また,ハイブリッドの結合性が温度により制御可能であることを見出した。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,分子鋳型ハイブリッドを用いた検出の最適化について検討する。これに加え,本研究の有用性,更なる応用発展の可能性を実証するために,食品試料を用いた検討を行う予定である。
|