研究課題/領域番号 |
16H04138
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
小川 昭弥 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30183031)
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研究分担者 |
矢野 重信 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 客員教授 (60011186)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ヘテロ元素 / パイ共役系 / ハイブリッド化 / 有機典型元素化学 |
研究実績の概要 |
研究計画に従って、まずホウ素官能基の導入反応について検討した。これまでにホウ素置換基の導入反応を開発してきたが、その反応機構は不明のままで、展開が不可能であった。詳細に反応機構を検討したところ、まず、pin2B2に有機触媒の孤立電子対が配位することで錯体を形成し、光照射されることによってホウ素-ホウ素単結合が切断される。添加剤によって安定化されたホウ素ラジカルとは別に、安定化されなかったホウ素ラジカルがアルキンに付加することで目的のホウ素付加体が生成する。立体障害より初期的にはtrans体のホウ素付加体が得られ、一部は光異性化によってcis体に変換される。添加剤の違いによって、PPh3を用いた場合、高選択的にtrans体が得られるのは光異性化の速度が(PhS)2と比較して遅いためであると考えている。 さらに想定外の結果であるが酸素ラジカルの反応性について検討していたところ、窒素を有するパイ共役系環状化合物を得ることに成功した。これは、ヘテロ元素のラジカル反応性を調べている中で偶然見出されたもので、新しいヘテロ元素含有パイ共役系の合成に大いに役立つ反応系であると考えられる。 また、現在、達成されていない不活性アルケン類への触媒的イオウ官能基導入反応についても検討した。不飽和結合への高い親和性を示す金触媒を用いると、目的の反応が進行することが明らかとなった。さらに詳細に検討したところ、反応系中で金触媒は硫黄二原子によって架橋された四核錯体を形成しており、この錯体が本反応の鍵活性種となっていることを突きとめた。 赤外線発光材料につながる白金錯体についても予想よりも1年早く、ヘテロ原子導入に成功した。 次年度はこれら見出した反応系をさらに展開し、発光材料共役系分子の創生を続けていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
高純度のヘテロ元素は資源の乏しい日本にでも生産される二次資源であり、合成中間体や機能性材料、医薬品や農薬など私たちの身の回りで幅広く利用されている。その有効利用にはヘテロ元素を直接的かつ高選択的に導入できる触媒反応の開発が重要であるが、ヘテロ元素の多くは金属触媒を失活させる触媒毒性や電子移動に基づくラジカルのクエンチングが問題である。本年の検討の結果、予想外の発見が2つ見出された。1つは酸化的反応による窒素原子を有する環状共役系化合物の生成であり、2つ目は金触媒による不活性アルケンへのイオウ官能基導入である。これらは工業的にも大きな価値があり、次年度以降にも併せて検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従って、共役分子の集積化による拡張パイ共役系の創生、およびフルオラス基やヨウ素の導入反応の開発を中心に展開する。白金錯体の合成は2年度以降であったが、予想以上に反応が進行し、X線結晶構造解析により直線形の分子構造も明らかとなったため、パッキング状態における発光特性についても前倒しで調べていく。
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