研究課題
本年度は研究計画に従って、ヘテロ原子を含むパイ共役系分子の発光特性および集積化、フルオラス置換基および環状カルボニル化化合物への応用について研究を進めた。昨年度大幅に研究が進んだ白金-イオウ共存共役系分子について、誘導体合成、および発光特性の評価を行った。X線結晶構造解析ではCH-パイ結合と考えられる分子間相互作用によって、集積化構造が確認された。また光化学特性を詳細に調べたところ、有機低分子としては比較的大きな光吸収を示し、360-390nmに約10000程度の比較的強い吸収を示した。また、発光特性を調べたところ、400-430nmにりん光を示した。この発光は温度依存性が見られ、分子集積化に基づく発光変化ではないかと推察している。次に、フルオラス化について、リン原子へ直接導入したP-フルオラスホスフィンの合成を試みた。リン原子にペルフルオロアルキル基が直接結合した電子不足なホスフィン化合物であり、フルオラス溶媒と呼ばれる高度にフッ素化されたアルカン溶媒に対して高い親和性を示す。種々の検討を行ったところ、光誘起ラジカル反応によって、P-フルオラスホスフィンを高効率で合成することに成功した。昨年度達成したカルボニル化共役系分子合成において、ペックマン色素類似体の誘導体合成に成功したが、その研究の中でコバルト触媒存在下、ヒドロキシ基を有するアルキンおよびジスルフィドを一酸化炭素加圧条件で反応させたところ、ヒドロキシ基と一酸化炭素がラクトン環を形成し、かつジスルフィド由来の硫黄官能基が導入される複合反応が高選択的に進行することを見出した。ラクトンは医農薬品の基盤骨格のひとつとして極めて重要な骨格であるため、本反応は硫黄官能基を有するラクトンを選択的に一段階で合成できるという点でプロセス化学における有用性が期待できる。
1: 当初の計画以上に進展している
大幅に研究が推進している白金―イオウ共存共役系分子について、CH-パイ結合による分子集積化がX線結晶構造解析から確認された。これまではパイ-パイ相互作用のみを期待していたが予想外のパイ共役系の効果であり、しかもりん光材料としての可能性も見出された。含硫黄カルボニル化共役系分子合成では、全く予期しなかったラクトン合成に応用できることが見出された。高分子材料につながる大きな成果と期待している。
今後は研究計画に従い、立体制御されたポリビニレンスルフィドの発光特性とカチオン化と合成に成功した化合物群をフィルム化または固体測定によって発光強度の確認を行う。またフルオラス化化合物については工業的な利用を検討するために再利用化について検討を行う予定で去る。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)
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