研究課題/領域番号 |
16H04145
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
新谷 亮 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (50372561)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ケイ素不斉 / 触媒的不斉合成 / π共役化合物 |
研究実績の概要 |
有機化合物の中でも光学活性化合物の役割は非常に大きく、これまでにも触媒的不斉反応による光学活性化合物合成の研究が行われてきたが、その大半が不斉炭素中心を持つ既存の骨格から成る化合物の合成に関するものである。一方、炭素と同族のケイ素を含む有機化合物は、現代の有機化学に関連する諸分野において必要不可欠な化合物群を成しているが、ケイ素不斉を持つ化合物の効率的な不斉合成法の開発や、その機能発現に関する研究はほとんど成されてこなかった。そこで本研究では、将来の有機材料としての応用を念頭に、架橋ケイ素上に不斉部位を持つ様々な新規ケイ素架橋型π共役化合物の触媒的不斉合成法を開発し、合成化合物の物性評価を通じて機能の開拓を目指すこととした。 既知のπ共役有機ケイ素化合物は分子骨格および合成法に非常に大きな制限があることから、本年度はまず、新たなπ共役有機ケイ素化合物の骨格デザインとその効率的な合成法の開発に取り組み、その結果、ケイ素で架橋したアリールピリジン類の新たな触媒的合成に成功し、これを母骨格とするケイ素不斉を持つスピロ型化合物を高い立体選択性で得るとともに、それらが円偏光発光活性を有することを見出した。これは、ケイ素不斉に由来する円偏光発光を観測した初めての例であり、その意義は大きいものと考えられる。また、この類縁化合物であるジベンゾシロール類の合成法開発途上において、新しい分子変換反応を見つけ、ケイ素と窒素で架橋された5,10-ジヒドロフェナザシリンの新規合成法開発への糸口を見出すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
アミノ基を持つ新規ジベンゾシロールの合成を試みていた際、当初の予想に反し、異なった新しい反応経路による5,10-ジヒドロフェナザシリンが生成することが明らかとなった。予期せぬ化合物の構造決定および、この新規反応の機構を調査するのに時間を要したため、当初よりもやや遅れた研究展開となった。
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今後の研究の推進方策 |
新しく見出した分子変換反応に基づいた新規ケイ素不斉光学活性化合物の合成およびその物性評価を研究項目に追加するとともに、当初計画していた架橋ケイ素上に不斉部位を持つ様々な新規ケイ素架橋型π共役化合物の触媒的不斉合成法の開発を引き続き進めていく予定である。
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