研究課題/領域番号 |
16H04150
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
垣内 史敏 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70252591)
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研究分担者 |
河内 卓彌 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 准教授 (70396779)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | キノリノラトロジウム錯体 / ロジウムビニリデン錯体 / 末端アルキン / 第二級アミン / エナミン / ジエナミン / 逆マルコフニコフ付加 / アミノカルベンロジウム錯体 |
研究実績の概要 |
本研究課題において平成29年度は、末端アルキンと種々の求核剤との反応について検討を行った。特に、求核剤として活性メチレン化合物や第二級アミン、第一級アミンなどを用いた検討を詳細に行い、ロジウムキノリノラト錯体によりアルキンを活性化させてロジウムビニリデン種へと変化させるために重要な因子について検討を行った。その結果、用いる溶媒の種類により異なる反応が進行するという興味深い成果を見出した。以前の反応条件では、末端アルキンと第二級アミンの反応の溶媒としてトルエンを用いており、この場合には1:1付加体であるエナミンが選択的に生成する。一方、今回の検討において溶媒をDMFに変えるだけで、他の反応条件が同じであるにも関わらず、アルキンと第二級アミンの2:1付加体が選択的に生成することを見出した。さらに、添加剤として用いるホスフィンの種類を変えることにより、2:1付加体のレジオ選択性が変化することも見出した。 研究計画書に記載している通り、当初の計画通り進まない場合は量論反応を検討する事により、反応を進行させるための知見を集めることを計画していた。想定していなかった反応が進行したことから、化学量論反応を行うことにより本触媒反応における鍵中間体の構造と性質に関する情報を行うことを目指して検討を行った。本反応にはホスフィンの添加が重要であることに着目して、キノリノラート配位子上にホスフィン部位を導入した配位子をもつロジウム錯体を合成した。この錯体を用いてアルキンとの両論反応を行ったところ、これまで反応機構上推定されていたが、単離例のほとんどないロジウムビニリデン種等価体を単離同定することに成功した。これらの錯体を用いて第二級アミンとの反応を行い、詳細な反応経路と反応進行に重要な因子の解明を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヘテロ五員環構造をもつ化合物の合成を末端アルキンとエポキシドとの反応により達成する検討を行ったが、目的とする反応が進行する触媒系の構築ができなかったため、アルキンとアミンの2:1型カップリング反応の開発の検討を開始した。 キノリン環上に様々な置換基を導入した修飾型キノリノラト配位子をもつロジウム錯体を合成し、それら置換基が反応性の与える影響を系統的に検討した。その結果、フッ素や塩素といったハロゲノ基をキノリン環の水酸基のパラ位にもつ配位子を用いた場合、2:1付加体であるジエナミンを与える反応の反応性の向上が見られた。この反応に関して詳しい反応機構ならびに鍵中間体の構造解析を行うことを目的として、化学量論量の錯体を用いた反応を検討した。キノリン環上にホスフィン部位をもつ三座配位キノリノラト配位子の合成とそれらをロジウムに配位させた錯体の合成を行った。合成した錯体を用いて末端アセチレンとの反応を行ったところ、2つのロジウムがビニリデン配位子により架橋した構造をもつ錯体の合成に成功した。この錯体は、キノリノラトロジウム錯体を触媒に用いる末端アルキンと求核剤との反応において想定されているビニリデンロジウム中間体と等価の構造をもっており、この錯体の構造を解析することにより反応機構に関して重要な知見を得ることができた。 さらに、このビニリデンロジウム錯体と第二級アミンとの反応を行ったところ、アミノカルベンがロジウムに配位した錯体が得られることが分かった。この錯体の反応性を検討している段階で、ビニリデンロジウム錯体がアミンと反応した際に生成する中間体に2つの形式があることが示唆される結果が得られた。現在、これらの反応性の違いについての知見を集めて更なる展開を計画している。
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今後の研究の推進方策 |
化学量論反応により得た知見を基にして、触媒反応の開発で問題になっている点を克服する。二座配位のキノリノラト配位子をもつロジウム錯体と三座配位のキノリノラト配位子をもつ錯体の反応性の違いを明確にできるように検討を行う。その検討で得た知見を基にして触媒反応を精密に制御した新規分子変換法の開発を目指す。二座配位のキノリノラト錯体は数多く合成しており、それらを用いた場合には、アルキンとアミンの反応性が高いことをこれまでの検討で明らかにしている。その知見を三座配位のキノリノラト錯体の反応性と比較することにより、反応の選択性に影響を与える中間体の構造についての知見を集め、触媒反応の進行が困難になっている因子を明らかにする。 三座配位キノリノラトをもつロジウム錯体と求核剤との反応性が、他の錯体と異なることに注目してヘテロ五員環構築法の開発への突破口を見出し、研究目的の達成を図る。
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