研究課題/領域番号 |
16H04155
|
研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
藤木 道也 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 教授 (00346313)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 円偏光 / シグマ共役高分子 / パイ共役高分子 |
研究実績の概要 |
発光性(高)分子や金属錯体は、基底状態(S0)の不斉構造から円二色性(CD)を、励起状態(S1)の不斉構造から円偏光発光(CPL)を示す。従来のアプローチでは化学的不斉源に由来していたため、外部バイアスによりCPL信号の正負符号を迅速かつ可逆な制御が困難であった。これまでに申請者は、物理的不斉源の円偏光源(左右と励起波長)を外部バイアスに非フォトクロミックで光学不活性な蛍光性π共役高分子に照射し、CPL/CD特性の発現と同時にCD特性の消去・反転・固定に成功した。今年度はこの知見をさらに発展させ、円偏光源の左右性と励起波長のデュアル制御による、全フォトンモードによるCPL特性の発生・消去・反転・固定をすべて可能にするキラル発光フォトニック高分子システムを構築する。今年度は、 1.らせんポリシランから光学不活性なパイ共役高分子への不斉転写とそれに続くポリシランの光主鎖分解により、青色、緑色、赤色の円偏光発光性を有する光学活性なパイ共役高分子凝集体の発生に成功した。 2.光学活性な高分子凝集体や光学活性なカンファー分子からの円偏光発光励起スペクトルから、これらの系がKasha則に従わない、Anti-Kashaの系であることを見出した。 3.光学不活性なパイ共役高分子/パイ共役分子/金属錯体を溶媒可溶性セルロース誘導体にドープ薄膜化することにより、それぞれ無触媒/常温常圧/短時間でそれぞれ対応する光学活性体となることを円偏光発光/円偏光発光励起/円二色スペクトルから実証した。計算化学(MM/MD/MP2/DFT/TDDFT)から分子内/分子間に弱い引力的相互作用が関わっていることを示した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1.らせんポリシランの不斉転写とそれに続く光分解により、青色、緑色、赤色の円偏光発光性を有する光学活性なパイ共役高分子凝集体の発生に成功した。 2.光学活性な高分子凝集体やカンファーからの円偏光発光励起スペクトルからAnti-Kasha則に従うことを見出した。
|
今後の研究の推進方策 |
1.らせんポリシランの不斉転写とそれに続く光分解により、円偏光発光性を有する光学活性パイ共役高分子凝集体の探索から不斉転写効率と不斉アルキル基との相関を明らかにする。 2.円偏光源を物理的不斉源として、アゾベンゼン系高分子への不斉発生制御を検討する。
|