研究実績の概要 |
角膜に非炎症性変性疾患で人種によらず1000名に1人の有病率である円錐角膜社会的問題となっている。円錐角膜は,角膜の中央部分の厚みが薄くなり,角膜が前方へ突出するため,角膜の曲率が正常範囲を越えて小さくなり(乱視)視力が低下する非炎症性変性疾患であり,角膜実質のコラーゲンの架橋構造の破壊がひとつの原因と考えられている。そのため,治療法としてリボフラビン点眼の後に長波長紫外線(λ= 370nm, UV-A)の照射により角膜実質内のコラーゲンを架橋させることで角膜の力学的強度をある程度回復できると期待されている(Dresden法)。しかしながら1時間以上に及ぶ手術時間の長さ,角膜上皮掻爬に伴う疼痛,充血や易感染性,角膜混濁などの合併症が報告されている。さらに,高エネルギーでの紫外線照射によって角膜内の酸素不足が生じ架橋の効果が落ちること,角膜がどの程度架橋されたのか(架橋度)を評価する方法がないことなど,多くの欠点が指摘されている。そこで本研究では,①コラーゲンを特異的に認識する選択的性適合性架橋剤の創製と架橋方法の確立と架橋メカニズムの解明,さらに②架橋による角膜ゲルの物性変化を非侵襲的に明らかにする方法論を確立することを目的とした。 本年度は,前年度までに分子設計,合成した「末端にコラーゲンモデルペプチドを有する多分岐型ポリエチレングルコール(Multi-arm-PEG-CMP)」を用い,豚摘出眼を用いて角膜の架橋を行うとともに,VIPA etalonをタンデム型に用いたブリルアン光学顕微鏡を用いて,非侵襲的に角膜の力学特性(弾性率)の測定方法を確立した。さらに,Dresden法,すなわちリボフラビン点眼,紫外線照射による豚摘出角膜の架橋を行い,ブリルアン散乱法から得られるブリルアン弾性率のUV照射時間依存性を明らかにした。
|