研究実績の概要 |
本研究では、ノンコーディングRNA(ncRNA)の高感度検出(in vitro)と生細胞内可視化のためのケミカルプローブとして、RNA結合タンパク質に匹敵する結合力と選択性を兼ね備えたRNA結合リガンドを開発することを試みる。 平成30年度は、先に開発したsiRNA(small interfering RNA)可視化プローブ(Chem. Commun., 2015)の機能改良を進めるとともに、より詳細な結合機構の解析を試みた。その結果、カチオン性のリシン残基を連結することで結合力を改良し(Kd = 150 nM)、より低濃度(200 nM)のsiRNA解析に適用できることを示した(ChemBioChem., 2019)。また、三重鎖形成ペプチド核酸を連結することで、結合力(Kd = 340 nM)と蛍光応答特性(極大波長 534 nm;I/I0 = 104)を大きく改良できることを示した(RSC Advances, 2018)。 なお、上記の他、rRNA A-siteに対する蛍光インジケーターとして、ナフチリジン誘導体を報告した(Chem. Eur. J., 2018)。その結合特性は優れたもので、A-siteのループ部位に高選択的に結合し、結合力(Kd = 440 nM)は既存の非アミノグリコシド系のA-site結合分子の中で世界最強である。また、シアニン色素TO-PRO-3が、rRNA A-siteに対する深赤色蛍光インジケーターとして機能することを見出した(Chem. Commun., 2019)。TO-PRO-3は、深赤色蛍光応答を示す初めてのFID(Fluorescence indicator displacement assay)インジケーターであり、青色~緑色蛍光性化合物のスクリーニングへも適用できるため、極めて有用なインジケーターとして期待できる。
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