研究課題
H29年度までは,(1) 酵素安定化機構の解明,(2) 機能集積型酵素センサー開発,(3) 高感度計測系の開発の2課題について研究を遂行した。課題(1):「水素結合性分子凝集体の構造化エネルギー」,「反応中心の構造」,「酵素凝集」におよぼす細孔空間サイズの影響を中性子散乱測定などから解明する中で,サブnmレベルの空間サイズ変化により生体高分子の高次構造・凝集構造が劇的に変化することを見いだしてきた。塩基数の異なるDNA二重鎖形成について,サイズマッチングによる劇的な構造安定化効果(平衡定数で100倍以上)を定量化すると共に,細孔内での配向性の変化(DNA二重鎖の長軸方向が細孔方向に垂直あるいは平行に配向)などの現象を見いだした。また,熱測定によるタンパク質吸着の評価系を構築し,モデルタンパク質であるミオグロビンの細孔内吸着がLangmuirモデルと異なることを見いだした。また,細孔サイズとミオグロビン高次構造の相関について,中性子散乱や赤外吸収などの多面的な評価から,ミオグロビン高次構造が細孔サイズよりは細孔内表面状態に強く依存することも明かとした。これらの結果は,酵素センサー設計の指針となるものである。課題(2):細孔内酵素反応によって生成する過酸化水素の計測試薬の開発を進めると共に,安定かつ高感度なセンサー開発を進めた。その中で,従来のシリカと異なる無機材料で,グルコースオキシダーゼの固定化に適切な多孔質材料の開発に成功した。課題(3):課題(2)で得られた成果を基に,高感度計測系の設計を行っている。現状で高感度化は達成されていないが,上記課題の遂行により解決可能と考えている。
2: おおむね順調に進展している
「酵素安定化機構の解明」課題については,酵素の細孔内吸着や高次構造に及ぼす細孔サイズの影響,細孔内表面の影響について新たな現象を見いだすことが出来た。これらの知見を元に「機能集積型酵素センサー開発」課題を遂行している。
H29年度までは,(1) 酵素安定化機構の解明,(2) 機能集積型酵素センサー開発の2課題について研究を遂行した。H30年度も上記課題を継続するとともに,課題(3)についても着手する。課題(1):H29年度までに「水素結合性分子凝集体の構造化エネルギー」,「反応中心の構造」,「酵素凝集」におよぼす細孔空間サイズの影響を中性子散乱測定などから解明してきた。H30年度においては,細孔内に対する酵素吸着様式,細孔内におけるフォールディング・アンフォールディング挙動を検証することで,細孔内酵素安定化機構の検証を進める。また,銅タンパク質をモデルとした活性中心構造に及ぼす細孔サイズの影響についても検証を進める。課題(2):昨年度までに,従来のシリカと異なる無機材料で,グルコースオキシダーゼの固定化に適切な多孔質膜材料の開発に成功した。この多孔質膜材料の特性を評価すると共に,高感度酵素センサー開発を進めていく。また,検出試薬の開発についても同時に進行する。課題(3):課題(2)で得られる知見を基にして高感度計測系の設計を行う。特に,唾液中の微量グルコース計測をターゲットとした設計開発を進める。
すべて 2017 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://anal.sci.ibaraki.ac.jp/yama/yamalab.html