研究課題
本研究では、細胞表面の抗原の高感度な検出を目指して、新しい酵素増感法の開発を目指している。本法はCARP法と名付けており、加水分解酵素を用いるところに特徴がある。加水分解反応により、蛍光性基質から親水性の部位が脱離することにより、疎水性となり、細胞質を染色するものである。これまでアルカリフォスファターゼ、βガラクトシダーゼで原理を実証してきた。これまでに、次のようなCARP法の問題点が明らかとなってきた。親水基が脱離せずとも染色することと、一旦細胞内に取り込まれた蛍光性基質が脱離して色移りすることである。これらの問題を解決する分子設計について、2018年度から改良を検討しており、2019年度も引き続き検討を行った。2019年度は、疎水性を増強して、脱離を抑制した分子、および、酵素反応に応答して、共有結合する分子である。疎水性を増強した分子に関しては、脱離は抑えられるものの、疎水性が高すぎるため、親水基がついた状態でも細胞に取り込まれてしまうことが分かった。目的は異なるが、細胞の標識試薬として有用な分子であることが分かった。一方、共有結合する分子に関しては、キノンメチドを蛍光の母核内に導入した分子を取得し、これが、期待通り、酵素反応に応答して、細胞内の酵素と共有結合を形成し、青色の蛍光性を獲得するという一連の流れを経て、強く細胞を染色できることを示した。増感の程度は、対照として用いた蛍光抗体法(青色)よりも10倍程度高く、従来法では検出困難な発現量の低いPD-L1の検出が可能であった。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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