本研究では、血管内皮細胞の培養条件を詳細に調べ周囲の細胞や間質とともに再構成することで、生理的に適切な血管モデルを構築し、「血管透過性」「血管新生 (細胞増殖と遊走能)」「間質成分との関係」を計測・評価する新規方法を開発する。今年度は、基盤技術の開発としてデバイス作製と細胞培養を行った。 デバイス作製:微小血管やリンパ管に相当する深さ・幅の流路を有するデバイスをポリジメチルシロキサンPDMSまたはゼラチンとカバーガラスを材料として作製した。PDMSのデバイスでは血管の拡張を模倣する伸展する培養基板を組み込んだデバイスを構築した。ゼラチンとカバーガラスの接合は、ガラス表面をアミノ修飾してグルタルアルデヒドによりゼラチンと共有結合させた。ゼラチンのデバイスでは導入孔にPTFEの管を液漏れせずに配管する方法を開発した。一晩の送液でカバーガラスとゼラチンは剥がれないことを確認した。 デバイス内細胞培養法の確立:デバイス内に臍帯静脈内皮細胞HUVECまたは肺の血管平滑筋細胞を培養した。内壁に吸着させる間質成分としてはフィブロネクチンを用いた。肺の血管平滑筋細胞は伸展する培養基板上で剥がれずに培養が出来ることを確認した。ゼラチンデバイス内に流路内壁全体にコンフルエントにHUVECを培養することが出来、血管内皮細胞のマーカーであるCD31の発現を免疫染色で確認した。デバイス内での細胞の代謝を調べるために、流路から回収した培地中のグルコースおよび乳酸を定量した。 送液法の検討:血管の流れに対応する送液システムとして、シリンジポンプを用いて、吐出流量や周期などを制御した送液および空気圧ポンプで拍動流を模倣した送液を試みた。
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