研究課題
本研究では、先に決定した紅色光合成細菌由来の光捕集反応中心超分子複合体LH1-RCの結晶構造(Nature 508, 228; 2014)に基づいて、(1)光捕集複合体の吸収挙動と構造安定性を制御する構造要因の特定、(2)キノン輸送機構の解明、(3)反応中心複合体の構造と特性の再検証、(4)膜リン脂質と複合体との間に存在する特異的な相互作用の解明を目的とする。さらに、(5)より高分解能での構造解析を目指す。2018年度まで行ってきた上記計画の項目(1)から(4)に関連するキメラ型光捕集反応中心複合体LH1-RCの作製、特性評価およびリン脂質組成の解析に続き、最終の2019年度には項目(5)に重点的に取り組み、大きな進展があった。ドイツ北部バルトルム島沿岸から採取された紅色硫黄細菌Thiorhodovibrio strain 970のLH1-RC複合体は通常のものよりLH1の近赤外の吸収極大が約80 nm長波長側に現れる。これはバクテリオクロロフィルaをもつ既知の光合成生物の中で最長の吸収極大を示す。最近研究協力者との共同研究でその原因はCa2+によるものであることが明らかになった(Imanishi, M., et al., Biochemistry 58, 2844; 2019)。高純度に精製されたLH1-RCを用いて低温電子顕微鏡による単粒子解析を行った結果、高分解能の立体構造が決定された。LH1中におけるCa2+結合部位、複数種類のLH1ポリペプチドの配置、さらにタンパク質と相互作用している界面活性剤の同定に成功した。現在これらの成果を取りまとめ、近く国際学術誌に投稿する予定である。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Biochimica et Biophysica Acta (BBA) - Bioenergetics
巻: 1860 ページ: 461~468
10.1016/j.bbabio.2019.04.001
Biochemistry
巻: 58 ページ: 2844~2852
10.1021/acs.biochem.9b00351
Arch. Microbiol.
巻: 201 ページ: 1351-1359
10.1007/s00203-019-01701-4
Photosynth. Res.
巻: 139 ページ: 281-293
10.1007/s11120-018-0507-y