研究課題/領域番号 |
16H04175
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
早出 広司 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員教授 (10187883)
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研究分担者 |
吉田 裕美 香川大学, 総合生命科学研究センター, 准教授 (10313305)
山崎 智彦 国立研究開発法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他研究員 (50419264)
津川 若子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80376871)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 直接電子移動 / グルコース脱水素酵素 / 鉄硫黄クラスタ / ヘムc / 分子内電子伝達 / 分子間電子伝達 / 疎水性領域 |
研究実績の概要 |
同酵素のβサブユニットのC末端領域にHis-tagを導入することにより、酵素複合体のアフィニティー精製を試みたが、アフィニティークロマトグラフィーへの吸着が確認されなかった。一方、Burkholderia cepacia株内に本βサブユニットと相同性を有するタンパク質のC末領域には長い疎水性領域が付加されていた。この配列情報をもとに、βサブユニットC末端領域に疎水性領域を導入し、その先にHis-tagを付加した。この結果、アフィニティークロマトグラフィにより効率的に吸着回収することに成功し極めて純度の高い酵素標品が調製できた。このようにして得られた酵素標品を用いて、結晶化条件を検討したところ、いくつかの条件において結晶が観察されるようになった。今後、これらの結晶から複合体の構造を解明する予定である。 一方で電子伝達サブユニット、βサブユニットにおける3つのヘムの電子伝達における役割を解明することを目的にヘム配位子に変異導入を行った。βサブユニットにの3つのヘムについて、そのタンパク質一次構造上、N末よりヘム1、ヘム2、ヘム3と名付け、それぞれの第六配位子のMet⇒Hisにそれぞれ置換したβサブユニットを構築し、それぞれの変異βサブユニットを有するFADGDH複合体の電子受容体への電子伝達能力、直接電子移動能力を検討した。その結果、ヘム1は本来の本酵素の外部電子受容体への電子伝達を担うヘムであることが示唆された。また、ヘム3は触媒サブユニットの鉄硫黄クラスタからの電子を受け取る役割を担っていることが示唆された。さらにヘム2が電極との直接電子移動において主たる電子伝達にかかわっていることが示唆された。 本年度は構造解析のための基盤が整ったとともに酵素学的性質および電気化学計測から電子伝達サブユニットであるβサブユニットの分子間および分子内の電子伝達の機作が明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は電子伝達サブユニットを中心としてその分子間および分子内の電子伝達における三つのヘムcの役割を解明するための生化学的知見を導出することに成功した。すなわち変異タンパク質の解析によって直接電子移動能、外部電子受容体との電子授受、さらに酵素複合体としての触媒活性を評価することでそれぞれのヘムcの役割を見出した。一方で酵素複合体の調製に手間取っていたが、この精製のためのアフィニティータグの導入において、C末端領域に疎水性のリンカーを導入することで高純度の酵素標品調製に成功し、結晶の獲得にいたっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は本酵素複合体の構造解析、特に電子受容体と触媒サブユニットの界面、さらに直接電子移動を行っている電子伝達タンパク質の界面の構造解析と機能解明に結びつく情報を得ることを目標にして研究を進める。本酵素複合体が大きいこと、単純な複合体の調製が困難であること、結晶成長の再現性が悪いことなどから、構造予測も含めて、この複合体形成と電子伝達機能にかかわる領域の構造情報につながる知見を得る。そのために当初予定していなかった電子伝達タンパク質を分断しながら解析することも視野にいれ研究を進める。このことにより、特に触媒サブユニットとの電子伝達を担っていると予測されたヘム3の構造上の位置を明確にできると期待している。
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