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2017 年度 実績報告書

蛍光性有機液体ナノ粒子の創出と細胞内蛍光イメージングへの応用

研究課題

研究課題/領域番号 16H04179
研究機関名古屋大学

研究代表者

多喜 正泰  名古屋大学, 物質科学国際研究センター(WPI), 特任准教授 (70378850)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード有機蛍光ナノ粒子 / 超耐光性蛍光色素 / 液体蛍光色素 / 蛍光イメージング / トリアルキルシリル基
研究実績の概要

前年度は液体ピレンを開発し,これを内包した蛍光性有機液体ナノ粒子の創出に成功した。しかし,液体ピレンは耐光性に乏しく,かつ励起には紫外光を必要とするため,蛍光イメージングを実施するには至らなかった。そこで平成29年度は,蛍光イメージングへの実践的な応用を指向し,可視光~近赤外光で励起でき,褪色に強く高輝度な有機蛍光ナノ粒子の創製を目指した。
我々が近年報告した超耐光性蛍光色素は,リンと炭素原子で橋かけした構造をもち,強レーザー光照射下でもほとんど褪色しないことが特徴である。この骨格を基盤に,前年度開発したトリアルキルシリル基を導入することによって液体化を図った。シリル基の導入位置やアルキル基の種類について検討し,液体色素を効率的に合成する方法を確立した。まず,得られた色素について溶媒中およびneatの状態で光物性を評価し,その違いについて検討した。吸収スペクトルはいずれの状態でもほとんど変化せず,440 nm程度に極大波長を有していた。したがって可視光での励起が可能である。一方蛍光スペクトルは溶媒依存性があり,極性に応じて480-610 nmまで変化した。また無溶媒の場合は560 nmに蛍光極大を示した。どの環境においても比較的高い蛍光量子収率を与えたことから,有用な色素骨格であると期待された。そこで,前年度の手法に倣い本分子を用いて液体蛍光ナノ粒子を合成し,その有用性について評価した。検討の結果,吸収および蛍光スペクトルはneat状態のものとほぼ同様であった。しかし。耐光性について検討したところ,ナノ粒子の吸収は光照射によって著しく減衰する様子が認められた。このような現象は溶媒希釈条件下では確認されたなかったことから,液体蛍光色素特有の性質であり,色素間の相互作用が何らかの形で寄与している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は,目的としていた「超耐光性蛍光色素を基盤とした液体蛍光色素の創製」を達成した。液体化を誘導する官能基の種類や導入位置によって色素の粘性が大きく変化するため,種々の分子を系統的に合成し,液体蛍光ナノ粒子のコア構造の最適化を図った。実際,合成した液体色素を用いたナノ粒子の作成,および生細胞の蛍光イメージングまで実施できたことから,本課題はおおむね順調に進展しているといえる。一方,合成した液体蛍光色素は期待したとおりの耐光性を獲得することができなかった。有機溶媒に溶解させた場合には超耐光性を示したことから,色素の濃度が重要な要素である。この点が改善できれば,当初計画以上の進展も見込める。

今後の研究の推進方策

これまでの知見を踏まえ,平成30年度は褪色に強く,かつ高輝度な近赤外蛍光ナノ粒子を創製し,その有用性について評価することを目的とする。リン原子を含むローダミン色素PREX710は,化学的安定性および耐光性に優れた近赤外蛍光色素である。まず,これを内包したナノ粒子の創製に取り組む。色素同士の凝集による蛍光消光を避けるため,ナノ粒子を構成するマトリックスとしてシリカを用い,PREX710を内部に固定化することによって,色素の流失を抑制する。得られる近赤外蛍光ナノ粒子を用いて,細胞およびマウスを対象とした蛍光イメージングを実施する。抗体などで表面修飾することによって,ターゲット選択的な標識を目指す。特に,担癌マウスの尾静脈からナノ粒子を投与することにより,腫瘍選択的な集積および非侵襲可視化を実現する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Color-tunable fluorescent nanoparticles encapsulating trialkylsilyl-substituted pyrene liquids2017

    • 著者名/発表者名
      Taki Masayasu、Azeyanagi Saki、Hayashi Kenzo、Yamaguchi Shigehiro
    • 雑誌名

      J. Mater. Chem. C

      巻: 5 ページ: 2142~2148

    • DOI

      10.1039/c6tc05208h

    • 査読あり
  • [学会発表] 耐光性近赤外蛍光ナノ粒子の創製とin vivoイメージングへの応用2018

    • 著者名/発表者名
      千田樹絵子,多喜正泰,有本知子,湯川博,馬場嘉信,山口茂弘
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会2018
  • [学会発表] Super-photostable Fluorescent Probes for Lipid Droplets Imaging2017

    • 著者名/発表者名
      Keiji Kajiwara, Masayasu Taki, Yoshikatsu Sato, Shigehiro Yamaguchi
    • 学会等名
      2nd International Symposium on Biofunctional Chemistry,

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2019-12-27  

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