研究課題/領域番号 |
16H04180
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
北條 裕信 大阪大学, たんぱく質研究所, 教授 (00209214)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | カベオリン / セグメント縮合 / チオエステル法 / 膜タンパク質 / 化学合成 |
研究実績の概要 |
本研究は、膜上のくぼみであるカベオラに多く存在し、カベオラからのエンドサイトーシスに重要な役割を果たしている、カベオリンの機能、構造を解析する目的で行っている。アミノ酸200残基近いカベオリンを全合成するため、全体を5つのペプチドセグメントに分割して固相法により合成し、それらを順次縮合することにより全配列へと導く戦略を立てている。ただし、カベオリンは部分的に疎水的な細胞膜に埋まっているタンパク質であるため、その疎水性の高さにより、幾つかのペプチドセグメントの溶解性が極めて低く、これらのセグメントについてさらなる純度、収率の向上を図る必要があった。 そこで本年度は、まず、固相合成の際の縮合試薬の当量や、その種類を詳細に検討することにより、副反応を詳細に解析し、その抑制法を検討した。その結果大幅な純度向上に成功した。また、イソペプチド結合の導入等による溶解性向上も同時に検討し、収率の改善にも成功した。そこで、得られた5つのセグメント同士の縮合を行った。いずれの縮合も比較的効率よく進行し、望むカベオリン全長の合成に成功した。続いてすべての保護基の除去を行った。200残基近いタンパク質であり、膜貫通部位を含む疎水性のタンパク質であるが、脱保護反応は収率よく進行した。得られた完全脱保護体は、比較的良好な溶解性を有しており、イソペプチド結合の導入が効果的であったことが示唆された。今後、パルミトイル基の導入、イソペプチド結合のnativeなペプチド結合への変換を行った後、膜に挿入し、その形状の変化を解析する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、カベオリンを構成する5つのセグメントの大量合成とセグメント縮合を行い、カベオリン全長の合成を行った。膜貫通部位を持つタンパク質であることか ら、膜貫通部位を持つセグメントは、固相合成収率が低いことが昨年度の結果から明らかとなった。そこで、縮合反応の詳細な解析や、イソペプチド結合の導入等を行うことにより、これらのセグメントの合成収率の向上に成功した。ついで、5つのセグメント同士を縮合して全長配列の合成に成功し、さらにその脱保護を完了した。 以上のように、本年度の計画はほぼ達成されたことから、ほぼ計画通りに進行していると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
イソペプチド結合のペプチド結合への変換とパルミトイル化を行うことにより、カベオリンの合成を完了し、脂質に埋めることにより、カベオリンの脂質膜の性状に対する影響を解析する。また、N末端側に存在する種々の翻訳後修飾の機能を効率的に解析する手法を検討する。すなわち、特定の翻訳後修飾を持つN末端側のペプチドは化学合成により、C末端側は大腸菌により発現させ、両者を化学選択的に縮合する手法を検討して、効率的に種々の翻訳後修飾カベオリンを調製する手法を検討予定である。
|