研究課題
本研究は、膜上のくぼみであるカベオラに多く存在し、カベオラからのエンドサイトーシスに重要な役割を果たしている、カベオリンの機能、構造を解析する目 的で行ってきた。アミノ酸200残基近いカベオリンを全合成するため、全体を5つのペプチドセグメントに分割して固相法により合成し、それらを順次縮合することにより全配列へと導く戦略で合成を行ってきた。カベオリンは部分的に疎水的な細胞膜に埋まっているタンパク質であるため、セグメントのいくつかは、溶解性が悪くイソペプチド結合の導入によりその問題を回避してきた。昨年までに、得られた5つのセグメント同士の縮合に成功し、カベオリンの全長配列の合成に成功した。本年度は、C末端付近に存在する3つのパルミトイル基の導入を行うこととした。パルミトイル基の高い疎水性のため、これまでの計画でその導入を最終段階で行う予定であった。そこで、水酸基、フェノール系水酸基、アミノ基、チオール基を持つモデルペプチドを合成し、チオール基選択的にパルミトイル化を行う手法を検討した。しかし、水酸基とチオール基を区別してチオール基をアシル化しようとするとアミノ基もアシル化された。一方でアミノ基とチオール基を区別してチオール基をアシル化しようとすると水酸基もアシル化されてしまうことが明らかとなった。このため、アミノ基を保護した状態で、チオール基のアシル化を行い、その後アミノ基の保護基を除去する方法に変更した。パルミトイル基を導入すると、カベオリンの溶解性が低下し、質量分析による分子量の確認が困難であったが、HPLC上での挙動の変化より導入を確認した。また、Tyr残基にリン酸化したペプチドセグメントも合成し、全長の配列へと導いた後、パルミトイル化を行い、選択的リン酸化が施された全配列を合成することに成功した。以上のように、化学合成によるカベオリンの機能解析の基盤の確立に成功した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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