研究課題
光合成器官は,自然が創造した最も光エネルギー伝達・変換効率の良いバイオナノデバイズである。特に,褐藻類は,単一分子内に電荷供給体と受容体を合わせ持つ極性カロテノイドを光受容体として,その光励起状態で発現する分子内電荷移動(ICT)励起状態を活用し,クロロフィルへの高効率(90%以上)なエネルギー伝達を実現している。本研究は,紅色光合成細菌由来の光捕集タンパク質を基盤とした革新的プラットホームを開発し,これを用いて,カロテノイド-クロロフィル間の励起エネルギー移動の実時間計測・コヒーレント分光計測を行うことにより,高効率人工光合成光捕集アンテナ系を創製するための鍵を握る,ICT励起状態の発現機構及び電子・振動構造を解明することを目的としている。今年度は,新規カロテノイド試料の探索のために,β-アポ-8’-カロテナールのモノシスおよびダイシス異性体のフェムト秒時間分解吸収分光測定を行い,グローバル及びターゲット解析を用いて励起状態ダイナミクスについて詳細に議論した。また,カロテノイド欠損紅色光合成細菌 Rhodospirillum rubrum G9+株から調製したLH1複合体に紅色光合成細菌の生合成では産出し得ない,高等植物由来のカロテノイドであるβ-アポ-8’-カロテナールを再構築することに世界で初めて成功した。蛍光励起スペクトル測定により,β-アポ-8’-カロテナールからB880バクテリオクロロフィルへの高効率な一重項励起エネルギー移動を確認した。さらに,フェムト秒時間分解吸収分光測定の結果から,β-アポ-8’-カロテナールのICT励起状態から高効率でB880バクテリオクロロフィルへの励起エネルギー移動が起こっていることを確認した。この結果は,本研究課題の当初計画を十分に満足する成果である。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) 備考 (5件)
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