研究課題/領域番号 |
16H04183
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
近藤 篤 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60533619)
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研究分担者 |
田中 秀樹 京都大学, 工学研究科, 准教授 (80376368)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 吸着分離 / 配位高分子 / 柔軟性 |
研究実績の概要 |
本研究は、持続可能な社会の実現に向けて選択的ガス吸着分離技術を向上させることを目的としている。その目的実現のために、細孔性材料の配位高分子において材料の動きに着目している。配位高分子とは、金属イオンまたは金属イオンクラスターと有機配位子等からなる結晶性の無機-有機ハイブリッド材料であり、炭素材料やゼオライトに続く細孔性材料として近年注目を集めている材料群である。初年度は、動きを示す配位高分子の合成を主な目的として研究を推進した。柔軟性を付与する手法には、配位子自体に柔軟性部位を導入する方法、骨格の集積状態を制御する方法、さらにそれらの方法を複合化する方法等が考えられるが、Nドナー型の有機配位子を用いて配位高分子の合成に取り組んだ。その結果、構造柔軟性をもつ配位高分子を得ることに成功した。結晶構造解析の結果、低次元の骨格を持つ集積体であることがわかり、溶媒の種類等を変えることにより構造変化することを確かめた。また、構成要素の配位能やサイズを考慮することで材料に動的特長を付与できることが明らかとなり、当初想定していた制御手法に加えて、新しい構造柔軟性制御手法の可能性を見出すことができた。さらに、構造柔軟性を示す配位高分子が組成を保ちながら可逆的に構造変化することを見出し、材料合成の新しい手法として提案した。一方、配位高分子の構成要素には金属イオンや多様な有機配位子が選択できるため、多様な構造実現に向けて引き続き新規物質の合成に取り組む必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り構造柔軟性をもつ配位高分子の合成に成功しており、その構造解析やゲスト内包過程における構造変化を観察することができた。さらに、ゲストの種類に依存して構造変化の有無が見られることから、物質の選択的貯蔵分離を検討するうえで適した材料であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は以下の項目を検討し、研究概要欄で示した研究目的を達成する。 1.様々なプローブ分子を用いて合成された配位高分子の単成分ガス吸着等温線測定を測定する。低温でのN2吸着等温線で基本物性を評価すると共に、室温付近での吸着特性も併せて評価する。さらに、高圧下での吸着も検討する。 2.混合ガス・溶液を評価するシステムを構築し、実際に得られたサンプルを用いて物性を評価するとともに、計算科学を利用して理論的に吸着分離特性を評価する。 3.選択性発現メカニズムを解析するために、In situ技術を駆使して構造変化過程をとらえ、吸着メカニズムおよび選択性発現メカニズムを明らかにする。 4.得られた知見を総合して柔軟な配位高分子の吸着分離技術を体系化する。
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