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2017 年度 実績報告書

高度なバンドポテンシャル制御による高機能光触媒の構築

研究課題

研究課題/領域番号 16H04186
研究機関東北大学

研究代表者

加藤 英樹  東北大学, 多元物質科学研究所, 准教授 (60385515)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード助触媒 / 酸素生成 / 光電気化学反応
研究実績の概要

ランタンタンタル酸窒化物とチタン酸ストロンチウムの固溶体は助触媒未担持でも水の酸化反応に活性であるが,酸化コバルト助触媒の担持により活性が向上した。助触媒担持の際の熱処理条件の影響を調べたところ,熱処理雰囲気および温度に強い依存性があることが分かった。ランタンチタン酸窒化物についても同様に酸化コバルト助触媒担持の際の熱処理条件について検討したところ,酸窒化物固溶体とランタンチタン酸窒化物では最適な熱処理条件が異なることが分かった。このことから,酸化コバルトが酸窒化物光触媒の水酸化性能を向上する有用な助触媒であるが,酸窒化物光触媒に酸化コバルト助触媒を担持する際に単一条件での熱処理をすることが必ずしも効果的ではないことが示された。
上記の酸窒化物固溶体を電気泳動法により透明電極(フッ素ドープ酸化スズ)に堆積させ光電気化学測定をした結果,光照射のオンオフに伴う明瞭なアノード電流応答が確認された。このことから当該酸窒化物固溶体が水の酸化に活性な光アノードとして利用可能であることが分かった。懸濁液を利用した光触媒的酸素生成反応では,酸窒化物固溶体の粒子サイズ増大はそれほど効果的ではなかったものの,光電気化学的水の酸化反応では,顕著な粒子サイズの影響が見られた。粒子サイズがミクロンサイズ程度になると光電流密度は熱処理前に比べて4~6倍に向上し,1V(対RHE)の電位では約0.3 mA/cm2の光電流が得られた。未熱処理時では光触媒結晶間の接触が密ではないため接触抵抗が大きいのに対して,アニールにより粒子を増大させた試料では,結晶同士が密に接触しているために電子の移動がスムーズになる。このように,粒子サイズの増大により粒界抵抗が小さくなることが光電流増大の主な要因であると考えられる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

助触媒の効果および担持条件について知見が得られたことは本研究課題を遂行する上で非常に有用である。また,酸窒化物固溶体光触媒が光電気化学的水の酸化に活性な光アノードとして利用できることが確認され,また,粒子サイズ増大により光電流密度が顕著に向上することが見出された。これらのことは,バンドポテンシャル制御型光触媒による水分解の実現を検討する際に有用な知見である。

今後の研究の推進方策

引き続きランタンタンタル酸窒化物とチタン酸ストロンチウムの固溶体の高活性化を検討する。特に,アニオン組成のアンバランスによる欠陥と電子トラップの抑制による活性向上を目指す。具体的な計画としては,酸化物イオン(-2)および窒化物イオン(-3)と価数の異なるフッ化物イオン(-1)を酸窒化物に導入することでアニオン組成のアンバランスにより形成される欠陥の抑制を行う。ランタンタンタル酸窒化物とチタン酸ストロンチウムの固溶体では価数の異なる構成元素の種類が多いため,フッ化物イオン導入の影響が出にくいかもしれない。そこで,より単純な組成の酸窒化物をモデル酸窒化物として用い,フッ化物イオン導入の効果を調べる。
これまで主にタンタル系酸窒化物を基礎とする固溶体について検討してきたが,応答波長の長波長化という観点から,タンタルに代わりニオブを主要構成元素とする酸窒化物に興味が持たれる。そこで,ニオブ系酸窒化物を基礎とする固溶体を合成し,長波長応答可能なバンドポテンシャル制御型酸窒化物光触媒の開発を行う。
さらに,これまでに合成した試料を共同研究者である豊田工業大学・山方啓准教授に提供し,過渡吸収分光によるキャラクタリゼーションをおこない,合成条件のキャリア寿命および光触媒特性へ与える効果の相関を調べ,その結果を基に,効果的な修飾法及び合成法の検討を行う。
このように新しく開発し,また高活性化したバンドポテンシャル制御型光触媒のZスキーム型反応系などへの応答を検討し,水分解反応実現を行う。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Synthesis of Rare Earth Niobate and Tantalate Powders via a Peroxo Complex Route2017

    • 著者名/発表者名
      H. Kato, K. Shimizu, K. Nakajima, M. Kobayashi, M. Kakihana
    • 雑誌名

      Chem. Lett.

      巻: 46 ページ: 1515-1517

    • DOI

      10.1246/cl.170652

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Photocatalytic and photoelectrochemical water oxidation using oxynitrides2018

    • 著者名/発表者名
      H. Kato
    • 学会等名
      International Congress on Pure and Applied Chemistry 2018
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] クロムドープによるバナジン酸ビスマス光触媒の長波長応答化2018

    • 著者名/発表者名
      奥野和哉, 加藤英樹, 小林久芳, 小林亮, 垣花眞人
    • 学会等名
      日本化学会第98春季年会
  • [学会発表] La0.5Sr0.5Ta0.5Ti0.5O2N光触媒の高活性化のための後処理の検討2018

    • 著者名/発表者名
      永井惇, 加藤英樹, 小林亮, 垣花眞人
    • 学会等名
      第121回触媒討論会
  • [学会発表] バンドポテンシャル制御による新規ニオブ系酸窒化物光触媒の開発2018

    • 著者名/発表者名
      青柳良輔, 加藤英樹, 小林亮, 垣花眞人
    • 学会等名
      第121回触媒討論会
  • [学会発表] Improvement of Water Oxidation Ability of Oxynitrides Aiming at Application to Photoanodes2017

    • 著者名/発表者名
      H. Kato
    • 学会等名
      2017 MRS Spring Meeing
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Study on preparation methods for La0.5Sr0.5Ta0.5Ti0.5O2N photocatalyst2017

    • 著者名/発表者名
      S. Nagai, H Kato, M. Kobayashi, M. Kakihana
    • 学会等名
      16th Korea-Japan Symposium on Catalysis
    • 国際学会
  • [学会発表] La0.5Sr0.5Ta0.5Ti0.5O2Nの光アノード特性2017

    • 著者名/発表者名
      永井惇, 加藤英樹, 小林亮, 垣花眞人
    • 学会等名
      第120回触媒討論会

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公開日: 2018-12-17  

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