ランタンタンタル酸窒化物とチタン酸ストロンチウムの固溶体は助触媒未担持でも水の酸化反応に活性であるが,適切な熱処理条件で酸化コバルト助触媒を担持すると活性が向上することを昨年度見出した。異なる熱処理条件で酸化コバルトを担持した試料のキャリアダイナミクスを調べたところ,活性の高い試料では光生成した正孔の助触媒への効率良い移動に伴う正孔の早い減衰および浅い準位にトラップされた電子の増大がみられ,これらの要因により活性が向上することを突き止めた。 光触媒活性は粒子サイズや形態など合成法により変化する要素に大きく影響を受けることが多い。そこで本年度は,従来錯体重合法で調製していた酸化物前駆体の固相法およびフラックス法による調製を検討した。固溶率50%の試料について,固相法およびフラックス法で得た結晶性の酸化物前駆体をアンモニア窒化処理することで酸窒化物固溶体が合成できた。いずれの試料も30-50nm程度の一次粒子が凝集して二次粒子を形成していた。錯体重合法試料の二次粒子径は3-5ミクロンであるのに対して,固相法試料およびフラックス法試料のそれは,それぞれ1-2ミクロンおよび0.5-1ミクロンであった。固相法試料およびフラックス試料はともに硝酸銀を電子受容剤とする酸素生成反応に対し,錯体重合法試料よりも高い活性を示すことが明らかになった。 本研究で開発してきた固溶体酸窒化物のZスキーム型光触媒系における酸素生成光触媒としての応用を検討した。水素生成光触媒にルテニウム担持ロジウムドープチタン酸ストロンチウムを使用し,鉄イオン系,ヨウ素系の電子伝達剤と組合せた場合では水分解反応は進行しなかったが,タンタルーチタン系固溶体ではコバルトトリスビピリジン錯体を電子伝達剤に用いた際に水素と酸素の両方の生成が見られた。一方,ニオブーチタン系固溶体ではZスキーム型水分解は進行しなかった。
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