研究実績の概要 |
有機無機ペロブスカイトトランジスタ特性を向上させるために、ペロブスカイト成膜条件の最適化およびトランジスタ構造の最適化を行った。具体的には、ヨウ化アンモニウム単分子膜で表面修飾した基板上にペロブスカイトを成膜すると、結晶性に優れた高品質なペロブスカイト薄膜が得られることが分かった。さらに、トップコンタクト・トップゲート構造を採用すると、接触抵抗が減少し、トラップ密度が小さなペロブスカイト/トップ絶縁膜界面にキャリアを流せることも分かった。このような手法を組み合わせることで、ペロブスカイトトランジスタのホール移動度は平均で12cm2/V s、最大で15cm2/V sまで向上し、ヒステリシスがほぼ完全に消失することを明らかにした(Adv. Mater. 28, 10275-10281, 2016)。また、低仕事関数の金属電極とペロブスカイトの間の化学反応を抑制するために、この界面にC60バッファ層を挿入した。その結果、化学反応が抑制されるばかりでなくC60層を介して電子が注入されるようになり、ペロブスカイトトランジスタをn型駆動させることができるようになった(Appl. Phys. Lett. 109, 253301, 2016)。ここで得られた電子移動度は平均で1.5cm2/V s、最大で2.1cm2/V sであった。しかし、接触抵抗の影響が未だ大きな問題であった。そこで、本来のペロブスカイトトランジスタの性能を引き出すために、ソース・ドレイン電極間の距離(チャンネル長)を大きくした。チャンネル長を400um以上に大きくすると全抵抗に対する接触抵抗の影響が極限まで小さくなるためにペロブスカイトトランジスタのホール移動度と電子移動度はそれぞれ26cm2/V sと4.8 cm2/V sまで増加することを見出した(Appl. Phys. Express 10, 024103, 2017)。
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