研究実績の概要 |
本研究課題では、りん光性有機白金錯体のエキシマー発光について、その発現メカニズムの解明と制御方法の確立を目指している。平成30年度は、エキシマー形成に及ぼす置換基効果の検討に加え、エキシマー発光性二核錯体の発光特性の検討を行い、以下の研究成果を得た。 (1)5’位に置換基を有する2-フェニルピリジナートをシクロメタル化配位子とするヘテロレプティック型有機白金錯体のエキシマー形成速度を発光減衰の解析から求め、さらに温度可変測定によってエキシマー形成の熱力学的パラメーターを求めた。エキシマー形成に有利な置換基と不利な置換基を比較した場合、活性化エンタルピーについては、前者の方が後者に比べて負に大きな値が得られたが、活性化エントロピーはほぼ同じ値が得られた。この結果から、5’位の置換基は遷移状態形成におけるPt-Pt相互作用に寄与し、電子求引性置換基によって遷移状態が安定化されることが示唆された。 (2)ヘテロレプティック型有機白金錯体をオルト-フェニレン基で連結した二核錯体について、補助配位子が発光特性に与える影響について検討した。補助配位子が嵩高くなるにつれてエキシマー発光に対するモノマー発光の比が大きくなり、立体障害を利用して発光色を制御できることを明らかにした。また、時間依存密度汎関数計算から、エキシマーは2つの錯体部位が逆平行に配向し、Pt-Pt結合により二量化したconvex-convex型構造をとることがわかった。 (3)ヘテロレプティック型有機白金錯体を4,5-キサンテニレン基で連結した二核錯体について、エキシマー発光挙動を検討し、当該錯体でも効率的に分子内エキシマーが形成されることを明らかにした。分子モデリングからエキシマー形成に有利な配座を検討したところ、当該錯体のエキシマーは錯体部位が平行に配向した構造を有することが示唆された。
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