研究実績の概要 |
本研究では、有機エレクトロニクスの分野において不足している、高性能電子輸送性半導体ポリマーの開発を目指す。具体的には、「キノイド系」、「π欠損ナフタレン系」、および「イミド系」骨格を中心に新規な電子親和力の高いπ電子系縮合多環骨格(アクセプターユニット)を探索し、これらをビルディングユニットとして用いた半導体ポリマーを合成する。合成したポリマーは電子輸送性材料として有機トランジスタや有機薄膜太陽電池に応用し、電子構造や集合構造との構造-物性相関を詳細に解析することで、高性能化に向けた分子設計指針を確立する。今年度、キノイド系材料として、ビチオフェンジオン(BTD)やベンゾジチオフェンジオン(BDTD)を用いた半導体ポリマーの合成を行った。これらは、いずれも高い電子輸送特性を示した。また、特にBDTD系ポリマーは、極めて小さいバンドギャップ0.88 eVを示し、透明導電膜としての可能性も秘めていることが分かった(J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 7725)。一方、イミド系材料として、ジチエノチエノチオフェンイミド(TBI)を有するポリマーを合成した。TBIを有するポリマーでは、その共重合骨格により、ホール、電子、両極性と極性の制御が可能であることが分かった。さらに、有機太陽電池として用いても、p型およびn型材料といずれとしても機能することが分かった(Adv. Mater. 2016, 28, 6921)。また、π欠損ナフタレン系としても、ナフトビスピラジン骨格の合成に成功しており、現在、ポリマー化を検討中である。さらに、既存のナフトビスチアジアゾールを用いたポリマーにて、極めて高い太陽電池の変換効率が得られた(J. Am. Chem. Soc. 2016, 138, 10265)。
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