研究課題
ラダーポリマーは繰り返し単位が2つ以上の結合からなる高分子と定義され、繰り返し単位ごとに環構造を有するユニークな高分子である。しかしながら、可溶生かつ構造が明確なラダーポリマーを合成することは容易なことではない。一般的に利用される多官能ビニルモノマーを用いたラダーポリマーの合成は分子間架橋による不溶化のため非常に困難なものである。当研究室では、重合官能基を有するイソシアナートのリビング配位重合によって分子鎖状に二重結合が並んだマルチビニルポリマーを合成し、希薄条件下でラジカル重合することによって定量的に可溶性のラダーポリマーを与えることを見出し、一次元規制重合と名付けた。本研究では、この一次元規制重合とリビングラジカル重合(LRP)を組合せた一次元規制ラジカル重合法による可溶性ラダーポリマーを合成することを目的に研究を行った。リビングラジカル重合の一種であるATRP(原子移動ラジカル重合)の開始剤部位とイソシアナートモノマーの重合開始剤部位を有する開始剤を合成し、メタクリレート基とイソシアナート基を有する二官能モノマーであるMOI-EOの重合挙動を調査した。一次元規制ATRPによりラダーポリマーの合成条件を検討するために、配位子の種類や触媒の量の影響を調査した。その結果、配位子としてTris[2-(dimethylamino) ethyl] amine(Me6TREN)を用いると、収率は低いものの高い二重結合消費率 (97 %)かつ低い分子量分散度(1.25)のポリマーが得られることが分かった。また、重合法をATRPからSET-LRP(単一電子移動リビングラジカル重合)に変更し、溶媒として2,2,2-トリフルオロエタノールを用いてSET-LRPを行ったところ、二重結合消費率は46 %とそれほど高くはないがポリマー収率を75 %まで増加させることが可能となった。
2: おおむね順調に進展している
マルチビニルポリマーの合成方法の確立、基本的な重合条件の精査が終了したため、今年度からより焦点を絞ってラダーポリマーの合成に着手することができるため、期間内に研究目的を達成出来る見込みがついた。
これまで得られた基礎的知見を基に、今年度から物理的空間的な制限を設けることによって分子間反応を抑制するマイクロエマルション重合について検討する。この方法が確立できれば、可溶性のラダーポリマーを簡便かつ大量合成することが可能となり、応用展開までを見据えた研究のより一層の推進を図ることができると期待される。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件) 学会発表 (11件) 図書 (3件)
Macromolecules
巻: 50 ページ: 324-331
10.1021/acs.macromol.6b02251
高分子論文集
巻: 74 ページ: 64-74
色材協会誌
巻: 90 ページ: 72-79
Org. Biomol. Chem.
巻: 89 ページ: 3350-3353
10.1039/c6ob00276e
React. Funct. Polym.
巻: 104 ページ: 1-8
10.1016/j.reactfunctpolym.2016.04.013
高分子
巻: 65 ページ: 292-294
機能材料
巻: 36 ページ: 25-33