研究実績の概要 |
本研究では、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)に、耐熱性と力学特性に優れたポリグリセリン(PG)を添加することでPEDOT/PSS/PGフィルムを作製し、電気・力学特性について検討した。重合度(n)の異なるPGn(n = 1, 2, 4, 6, 10)とPEDOT/PSS水分散液の混合溶液をガラス基板上にキャストし、空気中160℃で1時間乾燥・熱処理することによりPEDOT/PSS/PGnフィルムを作製した。さらに、PEDOT/PSS/PG溶液をポリウレタン(PU)とイオン液体(IL)からなるエラストマー上にスプレー塗布することにより伸縮性電極を作製し、電圧を印加しながら50%のひずみを繰り返し印加した際の抵抗値を測定した。 PEDOT/PSS/PGn(n = 1, 4, 10)の電気伝導度は、PG濃度が40 wt%以上で急激に上昇し、60 wt%で最大411 S/cmに達した。これは、PEDOTの結晶化によるキャリア移動の促進に基づく。さらにPG濃度が増加すると電気伝導度が逆に低下するのは、フィルム中のPEDOTの割合が減少したためである。そこで、PGの最適濃度を60 wt%とし、重合度について力学特性の比較を行った。フィルムのヤング率と切断強度は重合度とともに低下することから、PGの可塑効果が重合度に依存することがわかった。興味深いことに、切断伸度はPG4で最大26%に達し、フィルムが柔らかく伸びやすくなることが明らかになった。さらに、PU/IL上にPEDOT/PSS/PG4溶液をスプレー塗布することで伸縮性電極を作製した。PEDOT/PSS/PG4とPU/ILからなる伸縮性電極は50%延伸しても断線せず、最高170%まで導電性を保持していることが明らかになった。
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