研究課題/領域番号 |
16H04205
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
木村 邦生 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (40274013)
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研究分担者 |
山崎 慎一 岡山大学, 環境管理センター, 准教授 (40397873)
内田 哲也 岡山大学, 自然科学研究科, 准教授 (90284083)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 芳香族ポリアミド / 中空微粒子 / 重合相変化 / 高性能高分子 / 耐熱性 |
研究実績の概要 |
高分子中空微粒子の力学特性の向上に加えて、耐熱性、化学安定性や耐放射線性といった諸性能の高性能化が希求されている。剛直な芳香族高分子は、剛直構造に加えて発達したπ電子共役構造のために高性能に加えて高機能が期待される。しかし、剛直構造ゆえに背反的に成形加工性が極端に乏しく、中空微粒子の調製が困難である。そこで本研究では、申請者が開発した重合相変化を利用した高次構造形成法を利用して、新しい芳香族高分子の中空微粒子調製法を開発する。これまでに、直接脱水重縮合における重合相変化により、芳香族ポリアミドであるポリ(1,4-フェニレン-5-ヒドロキシイソフタルアミド) (PPHIA)の中空微粒子を調製した。中空微粒子を材料として利用する際に重要である微粒子径の制御技術も開発した。本年度は、他種高性能芳香族高分子への展開を念頭に、イミダゾール環内包ジアミンを用いて中空微粒子調製の検討を行った。ポリアミド-イミダゾール球状微粒子は調製することができたが、中空構造ではなかった。イミダゾール環を内包したことにより剛直性が高くなり、微粒子表面に架橋スキン層が形成されなかったことに起因している。そこで、結晶化領域に近づけるためにジフェニルスルホン中低温で重合を行ったが、表面に窪みを有するディンプル型球状微粒子は生成したが、中空微粒子は得られなかった。このことから、ポリアミド-イミダゾールでは微粒子表面にスキン層を形成することができず、ガスバブルを閉じ込めることができないために中空構造が形成されないことが分かった。さらに、高分子鎖の剛直性が中空構造形成に及ぼす影響を明らかにするために共重合を行い、イミダゾール構造が1,4-フェニレン基と10モル%置き換わっただけで、中空微粒子が生成しないことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度では、平成28年度に明らかにした知見をもとに、PPHIA以外の分子鎖構造の芳香族ポリアミドやポリアミド以外のポリイミド等の他種芳香族高分子の中空微粒子調製を行い、性能は優れているが加工性に乏しいために材料化できなかった高性能高分子の中空微粒子化技術を確立することを計画とした。また、平成28年度に未達である空孔率制御技術の開発も検討した。重合相変化を利用した中空微粒子の調製を他種芳香族高分子へと展開する場合に、アミド‐エステル交換反応を介した架橋スキン層が有効に形成し、脱離小分子によるガスバブルが微粒子内に閉じ込められる必要がある。そこで、高分子鎖の剛直性に着目して他種芳香族高分子へ展開した結果、高分子鎖の剛直性が微粒子の固化ならびに架橋スキン層の形成に大きく影響を及ぼし、剛直性の僅かな増加によって中空微粒子が形成されないことが分かった。この結果は、芳香族高分子の中空微粒子を設計する上では重要な知見である。また、空孔率制御技術の開発に関しては、粒子径との相関が見られることが分かった。以上より、当初計画に対して、「(2)おおむね順調に進展している。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度においては、これまでに調整が可能となったPPHIA中空微粒子と、ジアミン成分として少量の第2成分を共重合した芳香族高分子中空微粒子を中心に、形態的特徴,性能,ならびに機能に基づいた新規用途の開拓に関して、以下の項目を主に検討する。 (1) 高性能複合材用軽量化材、ならびに低誘電率改質材としての評価、(2) 耐放射線性の評価、(3) 空孔への有価分子内包化技術の開発、(4) 低分子内包化合物の安定性と放出特性評価、(5) 空孔を反応場とした特異的反応(重合)の開拓、ならびに(6) 微粒子の基本物性に基づいた用途探索。特に、これまでの高分子中空微粒子の用途との差別化を念頭に、(5)空孔を反応場とした特異的反応(重合)の開拓を重点的に検討する。マイクロスケール空間という規制環境が、重合反応や重合相変化法による高分子の高次構造形成に及ぼす特異的な現象を明らかにする。空間規制に加えて、微粒子空間の内壁であるポリアミドのアミド結合を介した水素結合が重合反応や重合相変化に影響を及ぼすことも期待でき、新しいマイクロリアクターとしての展開を意識した検討を行う。また、空間規制の効果を最大限に引き出すことに加えて、上記用途に見合った材料を提供するには、中空微粒子の空孔率を制御しなくてはならない。現在のところ、中空微粒子径との相関は把握しているが、粒子径と空孔率を独立に制御するには至っていない。粒子径と空孔率を独立に制御する技術開発も進めて行く。
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