研究課題/領域番号 |
16H04207
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研究機関 | 大阪工業大学 |
研究代表者 |
藤井 秀司 大阪工業大学, 工学部, 教授 (70434785)
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研究分担者 |
中村 吉伸 大阪工業大学, 工学部, 教授 (70298800)
眞山 博幸 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (70360948)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | リキッドマーブル / 気液界面 / 物質輸送 / 光熱変換 / 吸着 / マランゴニ対流 / 導電性高分子 / 粉体 |
研究実績の概要 |
本研究では、水面上に浮遊するリキッドマーブル周囲に形成される、光熱変換現象が生み出す界面張力の空間勾配を運動の駆動力とし、液体(リキッドマーブル内部液)の遠隔からの運搬を行う省エネルギー型物質デリバリーシステムを実現化する。さらに、水面を実験室として捉え、水面上においてリキッドマーブルの合一・崩壊により内部液の混合・徐放を行う、ラボ・オン・ウォーターシステムの基本概念を構築する。平成29年度は、リキッドマーブルの運動制御・牽引動力源としての機能評価を目的とし、下記2項目について検討を行った。 1.運動制御 水面上に浮かべたリキッドマーブルに対しレーザー光、太陽光を照射することで、光熱変換現象により界面張力の空間勾配を生み出し、これを「運動」の駆動力とすることで、リキッドマーブルを水面上で移動させることに成功した。具体的には、水面にのせたリキッドマーブルに対し、近赤外レーザーを水面に対して45度程度の角度で照射することで、良好にリキッドマーブルの並進運動を誘起することができた。また、光照射方向を制御することで、リキッドマーブルの運動方向のコントロールが可能であることを明らかにした。50マイクロリッター以上の体積を有するリキッドマーブルの運動制御にも成功した。 2.牽引動力源としての機能評価 レーザー光照射により誘起されるリキッドマーブルの運動を、物体の牽引動力へ変換することに成功した。具体的には、3Dプリンターを使用して作製した船の機能を果たす物体に貨物を積載し、これをリキッドマーブルの運動を駆動力とし、牽引した。リキッドマーブルの150倍の重量を有する船を動かすことに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の研究計画通り、水面上におけるリキッドマーブルの運動制御について知見の蓄積を行い、その後、物体を牽引する動力源としての機能評価に取り組んだ。計画通り目標を達成することができた。また、平成30年度の研究計画の準備実験も開始している。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度以降も、研究分担者との連携を通じて、省エネルギー型物質デリバリーシステムの実現化、およびラボ・オン・ウォーターシステムの基本概念の構築に努める。具体的には、下記の点について研究を推進する。 1. リキッドマーブルの運動制御:水面上に浮遊するリキッドマーブルに対してレーザー照射を行い、マランゴニ対流を駆動力とするリキッドマーブルの運動制御を行う。具体的には、レーザー光の波長・出力とリキッドマーブルの運動の速度との相関を明らかにする。 2. リキッドマーブルの運動の数値解析:リキッドマーブルの運動を高速デジタルビデオカメラで録画し、動画解析ソフトウェアを使用することで、変位、速度、加速度を解析する。次いで、光照射したリキッドマーブル周辺場の温度分布をサーモグラフィーを用いて可視化・数値化し、界面張力の空間勾配を視覚化する。取得する情報に基づき運動方程式を立てることで、リキッドマーブルに作用している力と仕事の大きさを評価する。 得られた結果を取りまとめ、学会発表、論文投稿を行う。これまでに取得した知見と平成30年度以降に取得する基礎的データを有機的に繋げることで、リキッドマーブル工学に基づく物質遠隔操作法を確立したい。
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