研究課題/領域番号 |
16H04208
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
山本 貴広 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (70392678)
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研究分担者 |
木原 秀元 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究グループ長 (60282597)
高橋 和義 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 研究員 (60645208)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 高分子 / 液晶 / 光可塑化 / 粘着・接着 / 自己修復 / 光応答 / アゾベンゼン |
研究実績の概要 |
本研究で開発したアゾベンゼン誘導体を添加した液晶を光応答性可塑剤として用いた高分子の光可塑化の応用として,光可塑化後の樹脂に発現する粘着性を詳細に調べた.ポリメタクリル酸メチル,ポリスチレンを用いた樹脂の粘着を光可塑化前後でタック測定により評価したところ,タックの温度依存性プロファイルが光可塑化により低温化した.さらに興味深いことに,タックの最大値は光可塑化した樹脂の方が大きくなった.これは,液晶に添加されているアゾベンゼン誘導体が紫外光照射によりトランス体からシス体へと光異性化すると,分子の極性を表す双極子モーメントが大きくなったことにより樹脂全体の極性が高まり,測定治具として用いたアルミの極性表面との相互作用が大きくなったためと推察した.この推察の妥当性を検証するために,異性体間の双極子モーメントにほとんど差がないトランス体スチルベンとシス体スチルベンをそれぞれ液晶に添加することにより可塑剤を調製し,アゾベンゼンを用いた系と同様に光応答性樹脂を作製してタックを測定したところ,シス体スチルベンを用いた可塑剤の可塑効果により,タックの温度依存性プロファイルは低温化したが,タックの最大値は,用いたスチルベンの異性体によってほとんど差はなく,光可塑化した樹脂のタックが上昇したことが,樹脂の極性上昇に起因するという推察が妥当であることを確認できた. さらに,高分子のガラス転移点と液晶相構造の相関関係を理論的アプローチにより探索するために、高分子‐液晶混合系の分子挙動を追跡可能な粗視化分子動力学計算プログラムの拡張を行った。具体的には粗視化液晶モデルに双極子モーメントを付与する機能を追加した。また,主鎖型液晶高分子および側鎖型液晶高分子が新たに計算可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で開発した高分子とアゾベンゼン添加液晶からなる複合樹脂における高分子に対するアゾベンゼン添加液晶の相溶性を光で変調することに基づく高分子の光可塑化の応用として,粘着材料への展開を着実に進めるとともに,ガラス転移温度の巨大な光変化に関する知見を得ることが出来ている.また,理論・シミュレーションとの協働についても,粗視化分子動力学計算プログラムの拡張により,計算対象を着実に増やしている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発したアゾベンゼン誘導体を添加した液晶を光応答性可塑剤として用いた高分子の光可塑化の応用として,粘接着だけでなく,自己修復への展開も検討する.また,ガラス転移温度の巨大な光変化を誘起できるアゾベンゼン誘導体と液晶の混合物について詳細な相図を作成してメカニズムを明らかにするとともに,種々のアゾベンゼン誘導体と液晶を用いた系についても検討する.また,理論・シミュレーションとの協働についても,実験で得られた結果を反映した議論を進める.
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