自動車排気ガスに含まれる窒素酸化物、炭化水素、一酸化炭素といった有害物質を効率的に浄化するためには空燃比の制御が必要であり、浄化触媒である三元触媒には酸素の吸収放出が可能な酸化セリウム系の酸素吸蔵材料が助触媒として用いられている。特に近年では、環境保護などの観点からハイブリッド自動車の普及が進んでおり、エンジンが低温の時やエンジンの回転数が低い時に排出される比較的低温の排ガスを浄化する必要性が高まっている。しかし、通常の酸素吸蔵材料では、200℃程度の低温領域では酸素吸蔵能が大きく低下することが問題となっている。以前報告者は、セリウム-アルミニウム合金を脱合金酸化して得られた酸化セリウムが低温下でも酸素吸蔵能を示すことを明らかにした。そこで、本研究では本作製法の改良と酸化ジルコニウムの添加によるセリア-ジルコニア固溶体の作製を行った。脱合金酸化法を行うにあたり、最初にアーク溶解炉を用いてセリウム、ジルコニウム、アルミニウムからなる三元合金を作成した。次に得られた合金をガスアトマイズ装置により急冷粉末とし、得られた合金粉末を塩基に浸漬しアルミニウムのみを溶解させ酸化物を得た。熱重量分析装置を用いて得られた各酸化物の200℃における酸素吸蔵能を調べた。その結果、ジルコニウムを含んだ固溶体はいずれもジルコニウムを含まない材料と比較してより高いOSC活性を示した。これは、イオン半径の小さいジルコニウムが格子内に存在することにより、セリウムの酸化還元の際に起こる格子の歪みを軽減するためであると考えられる。また、600℃に焼成した材料を用いて200℃における酸素吸蔵能の評価を行ったところ、セリア-ジルコニア固溶体ではジルコニウムを含まない材料と比べて耐熱性が大きく向上したことが示された。
|